解決のためにできること
1.「悩みの客観化」
当所ではまず、お話を丁寧に伺い、その悪循環を明確にして、どのように「イノシシが巨大化」しているのか分析します。
また,問題が大きくなったように思えると、あなた自身が小さくなったように思えます(セルフイメージの矮小化)。そのときは,あたかもそれが真実のように思いますが,実際は下の図のように,ただの「錯覚」なのです。
錯覚だと気づくには,我々がものを見るメカニズムを理解する必要がありますが,それと同じように,あなたの相対的に小さくなったセルフイメージを元のサイズに戻すために,悩みが続くメカニズムを理解するための知識をもつことが大切です。
そして、その知識はイノシシを正しい大きさでとらえる「悩みの客観視」に役立ちます。
すなわち,問題を正しく(客観的に)とらえて見える化し,問題自体を合理的に査定しなおすことで,過剰に膨らんだ悩みを「適切なサイズ」にもどすことができるのです。
このような「悩みの客観視」によって今まで「無理」と思っていた問題(巨大なイノシシ)は、太刀打ちできるサイズに収まり,あなたのサイズももとに戻り,解決の見込みが出てきます。
- 「何に困っていますか?」
- 「今までどうやってきましたか?」
- 「これからどうしたいのですか?」
- 「そのために何ができますか?」
…「客観視」することで明確に整理でき、悩み方が変わります。
「目からウロコ」のごとく、問題の大きさが「対処可能」レベルになり、「今」やるべきことが明確になります。
『神様、私に、変えることができないものを受け入れる平穏を、変えることができるものを変える勇気を、そしてその違いを知るための英知を与えてください。 』
― ラインホルド・ニーバー ―
大切なのは、「解決できることとできない事を区別し、出来ないことは受け入れ、できることを変える勇気を持つこと、そしてその両者を区別できる「知恵」を持つこと。」なのでしょう。
2.「自己肯定的な行動」を育む
基本的に、「悩み」のもとになるものを消したり、見えないようにする、ということにはこだわりません。むしろ、
それがある状態でいながら、「喜び」や「楽しみ」「満足感」「充実感」を積極的に求める態度をもつことを重要視します。
完全にポジティブな状態というのはあり得ないのではないでしょうか。といって、全く否定できるものでもないはずです。その両者のバランスをとることを目指します。一病息災とも言いますが、少し気になることがある方が、むしろ健康を維持するために役立つとも言えますよね。
ネガティブをなくすためにやる行為は、いくらやっても達成感も得られず、自信もつきません。不安に駆られて、ネガティブを減らすように行う行為は、実は衝動的な一時しのぎになっていることが多いのです。したがって、その行為が終われば、再びネガティブが戻って来て、再び、あなたを苦しめるのです。
誰でも、自分で能動的に行動をコントロールする意識をあえて持つ,という態度によって,変化の可能性が生まれます。それは、ネガティブを避けるという目的ではなく、自分の「価値」に基づいた前向きな行為であることが大切です。
ポジティブとネガティブの両立をご説明するための例えとして、当所で「バケツ理論」と名付けています。↓
人は心の中に二つのバケツがあります。
一方は喜びや楽しみなどの快い感情をためる「楽しみバケツ」
もう一方は不安や心配、悲しみなどの不快な感情を入れる「不安バケツ」。
不安バケツがいっぱいだと、心がざわつき、何とかしたくなります。
そこで、とりうる方法としては、不安バケツを減らすために、気晴らしや気分転換などの楽しみごとをすることです。
楽しみごとをすることで不安バケツが空になると、相対的に楽しみバケツが満たされ、楽になります。
楽しみの量が多いと、しばらくは「もつ」でしょうけど、徐々に楽しみは減っていき…、
やがて不安はまた帰ってきて、前と同じ状態、不安がいっぱいの状態になります。
不安バケツを空にすることばかりだと、これは何度でも繰り返され、心のアップダウンが激しくなり、感情に圧倒される、という結果を招くかもしれません。
そこで、
不安を減らす、と考えるのではなく、不安はあってもいいから、楽しみごとを「満たす」と考えてみます。
ちょっとだけ不安を「受け入れる」ということですね。
不安バケツのことは覚えておきつつ、楽しみバケツを満たす、ということを少しだけ優先する、ということによって、上下動を減らし、心を「フラット」にしやすくなることが期待できるでしょう。
- このように、不快な感情があっても、それをなくすと考えるよりも、それとともに歩む、という姿勢がむしろ不快さを軽くできる可能性があります。
- 大事なのは、「圧倒されない」ということで、自分で自分の感情を手名付ける、という感覚です。
- つまり、「zeroストレス」よりも「with ストレス」で考えて、それをマネジメントするという方向性の方が現実的であり、また、心の健康にも役立つといえるでしょう。
- それは、自己肯定感や自己批判という面でも同じことが言えるでしょう。「自己肯定的」とは「自信満々」であったり「自己否定をしない」ということではなく、失敗する自分を認め,失敗してもよい,失敗を許容できる,という柔軟な姿勢ではないでしょうか。
- すなわち、「自己否定、自己批判もするけど、自己肯定もできる」という、ある意味,それが究極の自己肯定といえるかもしれませんね。
ソクラテスの言う,「無知の知」のごとく,「自分は何も知らないことを知っている」のように,「私は失敗して当たり前だということを知っている。」ことを受け入れられることは,大きい余裕につながると考えています。