ストレスをもたらす不快な考えを切り替える5つのコツ

ストレスマネジメント

同じことを繰り返し考えて,考えの沼にはまってしまうこと,ありませんか?

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考えでも,うれしい考えが浮かぶのならいいのですが,悩みである以上当然それは不快な考えですよね。

カウンセリングの中でも,いやな考えが頭にこびりついて離れない。そんなお悩みをよく聴きます。

忘れようとしても忘れようとしても,ふと浮かんできては自分を苦しめるその考え。それを「思考の反芻」とか「反すう思考」と呼びますが,うつ病や不安症にはよく見られる状態です。

ただ,ちょっとした嫌なできごとや,失敗,葛藤などのストレス経験に対して生じることもあり,それが不眠をもたらしたり,過度な緊張をもたらしたりして,次第に心と身体が疲弊していくきっかけになったりすることもあります。

ある意味,メンタルヘルスの天敵ともいえるものなので,気を付けたいものですね。

思考の変容は気分の変容

したがって,反すう思考があるときに思考を切り替えることは,ストレスを緩和してメンタル面を安定させる方法として大変効果的です。

このブログではそのための「5つのポイント」について解説しています。

思考を切り替える5つのポイント

1. 思考の理解:思考は繰り返されるものと知っておく
2. 「忘れよう」「考えない」「思い出さない」を手放す
3. いやな思考も記録して覚えておく
4. 思考は「行動」で制御する
5. 渦に巻き込まれる前に!

不快な考えを切り替える5つのポイント

ポイント1 思考は反芻されるものと知っておく

まずは思考の特性を知っておきましょう。

考えが頭を離れない・・・前項でも書きましたが,それを牛などが食べたものを再び咀嚼することになぞらえて思考の反芻と呼びます。

牛の咀嚼と違い,思考の反芻はいくら考えても消化されることはなく,どんどんと膨らんでいって自分を圧倒する不快思考や感情をもたらします。考えることで解決策が見つかればいいのですが,そんなときは結局解決が見つからず,振出しに戻るという悪循環になっていることが多いでしょう。

思考の反すうの一例

例えていうと,現金が1万円入ったお財布を落としたと考えてみてください。(お財布代とかはないものとして失ったのは1万円のみと考えてください。)

当然悔やむでしょうけど,それは無理もないことです。

きっと「あの時ああしていれば」,とか「こうしていれば」,とか,考えが反芻されることでしょう。そして,何か買うたびに「あの時の1万円があればな~」と繰り返し思うかもしれません。

それが10回繰り返されたとしたら・・・都合10万円損したような気分になっていきます。

なくしたのは1万円なのに!


・・・念のため申しておくと,これは誰にでもある当たり前の機能であって,これ自体が問題であるとか病的であるとかということではありません。

まず,思考とはそもそもそんなものだということを理解しておきましょう。

ポイント2 「忘れよう」「考えない」「思い出さない」を手放す

それが思考の特徴だとはいえ,その状態は苦しいので,なんとか「考えることをやめよう,忘れよう」とするのが人情ですよね。

ただ一方では,それで解消されるのなら悩まないですよね。

考えることをやめようとしても,なかなか脳裏に焼き付いたものは離れてくれないものです。なぜなら,忘れようとするとますます忘れられなくなるというのは,人の脳の仕組みがそうなっているからなのです。

本来,忘れてしまうものにはわざわざ忘れようという注意を向けないものですよね。それを無理に忘れようとすると,それに「注意」が向いてしまうことになります。人は,注意が向いているものを記憶にとどめようとしますので,結果としてより強く意識に上ってくるようになるのです。

なぜなら,忘れようとする意識があることによって忘れたい対象を注意深く覚えておかないといけない,じゃあ「忘れる」わけにはいかないじゃあないか! という逆説的な状態に陥ってしまうからです。


例えば,「来週のプレゼンが不安だな~。」
とそのことばかりを反芻しているとすると,不安を感じながらも,それを覚えていることで,将来に対処しようとしているわけです。それを本当に忘れてしまったら大変ですよね。

よくやるワークですが,「これから分間,たとえば「ドラえもん」については決して考えてはいけません。さあ,どうぞ」と言われて,考えないでいられるでしょうか?

「さあドラえもんのことを忘れたかな?」と思った瞬間,すでに考えているわけです。大事なドラえもんのことは覚えておかないといけない。


「忘れよう」「考えまい」「思い出さないようにしよう」ということ,これはある意味,「要求」であり「タスク」なわけですね。人は要求には答え,タスクは実行しないといけないと普通考えますので,それをある意味忠実に実行しようとしているだけなのです。

忘れたいことを忘れないように復唱(リハーサル」をする必要があるわけです。

だから,忘れたいのなら,逆に「忘れよう」「考えまい」「思い出さないようにしよう」と努力をしないということで,それをタスク化しないということが大事です。

ついでに言うと,それが反芻されるということは,それは「重要なものであって何かの意味がある(と脳が解釈している)」,ということですよね。取るに足りない,無意味なことであれば自然に忘れられていくはずなので。

なので,それは不快さをもたらすものだけど,自分にとっては「忘れたくない大事なこと」でもあるという見方もできます。

むしろ,「来週のプレゼン」のように不快な思考であっても,それを反芻して思い出すことによって,「思い出してよかった」というちょっとした「安心感」を得ている場合もあるのです。

言い方を変えると,それは将来の備えて「準備せよ」というタスクを脳が設定しているということなので,それを忘れるということはとても不安なことです。


すなわち,思い出すことで,「安心」を得ているのです。

それを一時的に,気分転換などで忘れるということは結構です。でも,その来週のプレゼンの不安そのものは大事なことなので,そのあとで必ずまた舞い戻ってくるでしょう。

 思考からの逃避や回避,あるいは放置になってしまうと,脳はいつまでも安心できません。
 

つまり,そのような理解からわかることは,

いかに不快な思考の反芻と言っても,それを「忘れる」必要はないというか,忘れてはいけない,ということなのです。

そこで次のポイント!

ポイント3 「いやな思考も記録して覚えておく

むしろ,しっかりと覚えておくのです。

その反芻される不快な思考を「ぼんやりと」とか「何となく」ではなくて,しっかりと明確に「捕捉する」ということが役に立ちます。

 そうすることで現実的な対処が行われ,準備を図っているのなら,それでよし,と脳も安心するでしょう。

脳が安心すると,身体も落ち着いてきます。体が落ち着けば不安も和らいでいくのです。

例えるなら,思考の反芻は脳が意識のバックグラウンドで駆動させている処理なので,それをタスクマネージャーで管理するということでしょうか。

そのために推奨されるのが,次の項でも触れますが「紙に書く」ということです。認知行動療法では思考記録表という様式に自分の思考を書き出すということを行いますが,そこまでかしこまらなくてもいいので,何かメモ帳やノートなどにその時ぐるぐる頭の中で回っている思考を書き出してみましょう。

スマホの録音機能などを使って録音しておくのも,忘れないという意味ではいいでしょう。

そして,それを再見したり,聴いたりして,「ああ,こう考えているんだな。自分はこのことをとても重要視しているんだな。」としっかり行われているタスクを確認しておきましょう。

ポイント4:思考は「行動」で制御する

そのうえで,「解決」が見込めそうな思考であれば,できそうな現実的な対処行動にむすびつけていけるよう,対処行動のリスト化をしてみましょう。

そもそも対処が難しいことであったり,自分の対処の範囲外のことなのであれば,それを思考する優先順位を下げて手を放し,(一旦わきにおいて置き),他の今すべき行動(リスト)の優先順位を上げるという対処が必要になるでしょう。

「忘れない」というタスクを「小さい行動」という別のタスクに変換していくのです。

行動による認知的変化

例えば,プレゼンを不安に思う背景には,それがどう評価されるだろうか? と懸念があるかもしれません。評価をするのは自分ではないのにもかかわらず。

自分のことではないことや,先のことに対して悶々とするよりは,その順位を下げて「脳が求める現実的な対処」すなわち自分に今できることとしてプレゼンの内容を整えたり,資料をそろえたり,リハーサルをするなどして完成度とパフォーマンスの期待値を高めることができたらどうでしょう。

それはある意味,当然,「苦痛」を伴うことではあります。

ただ,プライベートな悩みを仕事で忘れる,ということもありますよね。動けば,その動きに対して焦点が向くので,悩みは薄まるものなのです。

思考的にも「やるだけのことはやった」と開き直ることもできるでしょうし,ある種の満足感も生まれるでしょうし,「ポジティブさ」にも気づけるかもしれません。

「人事を尽くして天命を待つ」という諦観も生まれ,それは「評価」は聞き手が行うことなのでそれについて「手を放す」ということにもつながるかもしれません。

行動は,「やることやってるな」と「脳」を安心させることにつながるのです。

行動はスモールステップで

ところで,この際は「小さい行動」であることが大事です。小さい行動から少しずつ,状況に合わせてステップを上げていくというスモール・ステップで行動に結びつけていくようにすることで,無理なく「不安」→「行動」→「安心」の変換ができるでしょう。

実はここはとても大切なポイントで,行動はいきなり「大きいこと」や「達成」をめざすとむしろ手を付けにくくなるものですよね。なので,できるだけ細分化して,「今できること」から計画を立てて始めることが大切です。

以上のように考えるなら,「不安」は「行動」そして「成功体験」への原動力にもできるのです。

そうして『行動優位』のパターンを作ることができれば,脳も安心して,いちいち反芻する必要もなくなってきて,反芻から解放されることが期待できるのです。

すべては「行動」なのです。

したがって,視点を変えると,今までの思考の反すうによる苦痛は「行動」を避けていたことによって生じていたということであるともいえます。

なので,今度は「行動」することに伴う期間限定の「苦痛」に直面することになるわけですが,その一時の苦痛と「ともに」行動することができれば,長期的な思考の反芻という苦痛から逃れることができるのです。

ただ,不安感や苦痛感がいやだから避けていたのに,あえてそれに向き合うということに相当な抵抗感があることは自然なことです。

不安・苦痛感のコントロール

だからその不安や苦痛感をコントロールできるようにすること,すなわち苦痛と向き合う勇気を育てる必要があるわけです。

その際,その方法として役立つのが,呼吸法などのリラクセーション法,そして最もお勧めするのは「マインドフルネス」を練習することです。

マインドフルネスやリラクセーションによって,ご自身がすでに持っているであろう,「意志の力」すなわち役割意識とか,仕事へのコミットメントとか,やりがいとか,そういう「ポジティブな側面」を最大限活用することが期待できるでしょう。

そうすれば,不快思考も頭の中にわざわざ浮かんできて無理やり忘れないようにする必要はなくなりますし,それに圧倒されて疲弊することからも解放されることが期待できるでしょう。

ポイント5:渦に巻き込まれる前に早めの対処を!

最後のポイントは,できるだけ早く,つまり思考の渦が小さいうちに捕捉する,ということです。

思考は反芻することによってどんどんと膨らみ,次第に制御が難しく,大きく感情を揺さぶる大きさに育っていきます。そうなると,上記のように自分の思考を俯瞰する余裕もなくなっていくので,そうなる前に,早めに断ち切りましょう。

そのためには,渦が巻き始めるサインをつかむことが肝心。サインに気づいたら,それを逃さず,捕まえに行って,書くなり録音するなりして,捕捉しましょう。

セルフモニタリングの習慣化

ただ,その「サインをつかむ」ということにも少し慣れというか,練習が必要です。急にはなかなかできないものなので,あらかじめの備えとして,日ごろから「自分と対話する習慣」「自分の内面をモニタリングする習慣」を持っておくとよいでしょう。

自分に「今,何を考えているの?」,あの時「どう考えていた?」と自分「問う」という習慣を持ってみましょう。

そうして,フト考えていることや,または定期的にある状況で自分はどう考えていたのかを思い出してみて,思い出したことはぜひポイント3でお伝えしたように,「書く」ようにしましょう。

記録表でも日記でもいいですし,ブログを書いたり,X(旧ツイッター)を利用するなどの方法もあるでしょう。

記録・書くは,不安の正体を明確にしてつかむため,そして思考の出始めを捕捉するためにも大切な方法です。

そうして,「自分の思考への気づき」を少し深めておくことが役に立つでしょう。

そして,ネガティブな思考の反すうに気づいたら,「こう考えているんだな。確かにこれは大事なことかもしれない。でも今は巻き込まれる必要はないんだ。今は今すべきことをしようじゃないか。」と注意の矛先を切り替えましょう。

そうすることで,渦が小さいうちに行動によって食い止めることができれば,膨らんだ反芻思考に圧倒されることなく,解放される可能性が高くなっていくでしょう。

前項の繰り返しになりますが,

これらは不安と向き合う行為になるので,一時的に不安は高まるかもしれませんが,長期的には不安を低減してくれます。

新しいパターンの対処方法へ

底なし沼にはまったときに,抜け出そうとあがくとますます沈みます。

思い切って,勇気をもって怖さを受け入れ,不安に浸り,いったんそこであがくことをやめることで周囲を見回す余裕ができます。

水難事故の際の「浮いて待て」も同じ理屈ですね。

ただ,一時的とはいえ,強い不安(恐怖)と向き合うことには当然,抵抗もあるでしょう。

これも繰り返しになりますが,その不安を軽減する備えとして,呼吸法などのリラクセーション法,そして「マインドフルネス」を練習しておくことは役に立つでしょう。

これらは一定の練習は必要ですが,長期的な大きめのストレスから,日ごろのちょっとしたストレス,ちょっとした嫌なことと向き合い,それから手を放すためにかなり効果的な方法です。

もしかしたら,小さい思考への対処のために,それを遠ざけるために「効果的ではない対処」を行うこと(すなわち直面する不安から逃げる・避ける・放置する)が,不安を育てているのかもしれないのです。

不安に向き合ってみる,ひたってみることが,実は不安を遠ざける一番の近道なのかもしれません。

まとめ

以上,思考が反芻されているときの対処の考え方を5つに分類してお示しをしました。

  1. クヨクヨは人の思考の仕組みで起こる自然現象であること。
  2. 「忘れよう」としないこと。
  3. 「記録」をとって不安の正体をつかむこと。
  4. 具体的な行動でアプローチすること。
  5. 行動に伴う不安はリラクセーションやマインドフルネスの練習で備えておくこと。

ご興味のある方は,以下のような関連の書籍なども参照されてみるとよいでしょう。

ただ,以上を自分一人の力で行うには限界もあるでしょう。そんな時は専門のカウンセラーに相談することをお勧めします。

以上,今回の記事が少しでもあなたのメンタルヘルスに役立つことを願っています。

最後までお読みいただきありがとうございました。