新型コロナ禍のなかでのストレス対策

ストレスマネジメント

軽いストレスは徐々にたまり,徐々に影響してくるものですが,災害などの急激な強いストレスを経験すると,一時的に強い反応が起こることがあります。その反応は大抵,時間とともに自然に和らいでいくものですが,その背後では心身の疲労が積み重なっていることもあり得ます。

そうなると,「二年物」や「三年物」のストレスによる悪影響によって,いつも通りの軽いストレスであっても,思いもよらない急激な反応を生じることがあります。

つまり、いつもなら何ともない「ちょっとしたこと」がきっかけとなって、メンタル不調の悪循環に落ち込んでしまう、ということもあり得るのです。したがって,災害も含め,ここ何年かの間に強いストレスを経験した方は特に注意が必要です。

新しい生活様式はストレス

COVID-19による社会への影響は,長期的に影響する災害のようなものでもあり,個人を真綿で締めるように効いてきています。全般的に,みんながストレスの水位が上がっているのかもしれません。

「変化」はストレスでもあります。「新しい生活様式」といえば聞こえはいいですが,そこかしこに新しいストレッサーが増加中,ということでもあります。

なんとなく引っかかる,どことなくスッキリしない…そんな思いも増えるかもしれませんが,今まさに人類総出でメンタルのバージョンアップに取り組んでいるといってもいいかもしれません。

そんな中では,今まで通りにいかないことも増え,いつもなら何ともない「ちょっとしたこと」がきっかけとなって、メンタル不調の悪循環に落ち込んでしまう、ということもあり得るのです。

なんとかここを乗り越えて,自分なりのニューノーマルを見つけたいと思う今日この頃です。

ストレスを乗り越えるために

さて,ストレスの影響を受けるのは当たり前のことであり,避けることはできません。COVID-19にはワクチンができたとしても,ストレスにはワクチンができることはないでしょう。したがって,ストレスを乗り越えるためには適切なストレス対処法を日ごろから習慣化することが大切です。

運動や楽しいこと,リラックスなどのいつものストレス対策のほか,専門家への相談も大切なセルフケアの一つです。我慢して症状を悪化させてもメリットはありません。疲労やストレスでしんどさを感じたら,恥や罪と思わず,早めに専門家への相談をお願いします。

自分の心と体と対話し、疲れているようなら自分へのコンパッション(思いやり,慈悲の気持ち)を持ち,セルフケアに時間を割きましょう。(相談も大切なセルフケアの一つです)

おすすめのストレス解消法7選

※COVID-19への備えはまだまだしなければなりません。感染防止の配慮,施設利用の場合は施設の決まりを守って,できることから始めましょう。

① 身体的エクササイズ

ほどよい運動はうつ予防の基本。まずは散歩・柔軟体操など,気軽にできることから始めてみてはいかがでしょうか。

運動については、「少し息があがる程度の早歩きなどの有酸素運動」を行うと脳の構造が変化し、自律神経の興奮が抑えられることがわかってきました。30分を週3回(一日おき)程度行えば,効果を持続させることができるそうです。

ゆっくり歩くのではなく、息が上がる程度の軽い負荷をかけることが重要です。「話ができる早歩き」がペースの目安です。

※疾病等の治療中の方は,医師とご相談して適切なエクササイズとなるようご配慮ください。

② 瞑想・座禅(マインドフルネス)

心を落ち着け,仕事力アップのために静かなブーム。米IT企業では必須のアイテム。「今,ここ,自分」でストレスを軽く。

マインドフルネスとは

「心を今,この瞬間に集中する」ということを意味します。皆さんも,何かをしているときに,あれこれと考えが移ろい,いろんなことが頭に浮かび,何か時間の無駄をしているようなとき(心ここにあらず)に,「ハッと我に返る」ことがありませんか?

まさにその瞬間を「マインドフルネス」といいます。あちこちさまよう心が「今,ここに戻ってきた瞬間」のことです。そういう瞬間を増やし,さまよう心を最小にすることで,人は健康度が増し,合理的で計画的な行動が増え,パフォーマンスが向上することが分かってきています。

呼吸への注意

その訓練には,いくつかの方法がありますが,重要なのは,座禅や瞑想によって呼吸に注意を向ける,という訓練を繰り返すことです。今はやりの「鬼滅の刃」風に言えば,「全集中の呼吸」ですね。すべての注意を呼吸に向ける,という意味ならば,まさしくマインドフルネスのことです。

以下に,基本的なやり方を簡単にご紹介しておきます。

マインドフルネスを身に着けるには

自分が今まさに行っている呼吸という動作にやさしい注意を向けてみましょう。呼吸に注意を向けて,「スー,ハ~,ハ~」と,「スー」と吸う方を1回に対して,「ハ~,ハ~」と2回吐くようにすると,緊張感が和らぎます(2段呼吸)。「深呼吸」でたくさん吸うよりも,「多めに吐く」方を心がけてみてください。

呼吸のリズムは大切ですが,それより大切なのは,常に呼吸に注意を向ける,という気持ちです。

1.静かに呼吸に集中して,呼吸に伴う体の動きに気づきましょう。息を吸い込んだときは静かにふくらみ,息を吐いたときはちぢむのを感じましょう。(吸うとき:「ふくらみふくらみ」,吐くとき:「ちじみちじみ」とつぶやいてもよい」)。

2.まるで自分の呼吸の波乗りをしているように,息を吸い込んでいる間も,息を吐き出している間も,呼吸の全ての瞬間に注意を集中しましょう。

3.自分の心が呼吸から離れていることに気がついたら(ハッと我に返ったら),そのたびに呼吸から注意をそらせたものは何かを確認してから,静かに体の動きに注意を戻し,ふくらみやちぢみを感じ取ってください。

4.心が呼吸から離れて他のことを考えはじめるたびに,呼吸に注意を引き戻すのがあなたの仕事です。どんなことに気をとられようとも,そのたびに注意を呼吸に引き戻しましょう。


「マインドフルネスストレス低減法」(ジョン・カバットジン;2007)を参考

③ 緑と触れ合う

自然との触れ合いでストレス解消。ハイキングやキャンプなどがブームとなっていますが,庭やプランタ栽培の緑でもOK ! 探せば近くに自然と触れ合える公園や施設があるかも。。くれぐれも自然環境への配慮も忘れず,楽しみましょう。

④ ボランティア

「自信・自己肯定感」を高める効果的な方法。「できることから無理なく」が大切。

⑤ 読書や音楽・映画など

「好きなこと」に没頭できる趣味の時間は自分でできる最高の癒し。一人でもでき,あまりお金もかからないものがいいですね。

⑥ 旅

鉄板のストレス解消法。Go Toキャンペーンなどの後押しもあり,旅行者も増えてきているようです。規模は縮小しても,修学旅行を行う学校も多いですね。感染防止の意識は必要と思いますが,いつもとは違う場所でいつもとは違う時間の流れに身を置くのは,心身のリセットに最高ですね。

ただ,ある研究では旅のリフレッシュ効果は3週間程度だそうです。3週ごとに旅に行くのは現実的ではないでしょうから,旅の思い出となるもの,写真や旅先のグッズなどを残しておくとよいですね。

⑦ リフレッシュメント

アロマやお茶タイム、昼寝などの自分なりのツールを工夫し,小休止を図りましょう。あくせくする時間の流れから,少しだけでもゆとりの時間を持って,自分をいたわりましょう。

*  *  *

心の応急処置

何か嫌なことや落ちこむことがあったら,2分間だけ,何か別のことをしてみましょう。ひたすら深呼吸,スマホのゲーム,パズルなどでもOK。あえて,積極的に現実逃避をしてみて,嫌な出来事を2分だけ忘れられたら,その後の気持ちが楽になります。

*  *  *

最後に,慈悲の気持ちで自分をいたわる方法の一例をご紹介します。

セルフ・コンパッション・ブレイク

(Neff & Germer,2018)

※「目標」とか「すべき」ものではなく,自分に対しての「祈り」や「願い」として,「置いておく」という感覚で,ご自身に次のようにささやいてみましょう。

  1. 今,相当ストレスを抱えているかも…。これはつらい状況だ。
  2. 人生,悩むこともあるのは当たり前だよ。苦しいのは自分だけじゃないし,似たような状況におかれたら,誰でもこういう感情を持つよ。
  3. そんな時は,自分に優しくできますように。
     ありのままの自分を受け入れられますように
     自分を許せますように
     強くいられますように
     忍耐強くいられますように

自分の心・体と自分をいたわってやさしく付き合い,慈悲的に対話する習慣をもてるといいですね。私もそうありたいと思っています。

今日もお読みいただきありがとうございました。

※ご紹介している方法は効果効能を保証するものではありません。実践にあたっては自己責任でお願いします。

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