この時代だからこそ:「心を守る」ための心がけ

ストレスマネジメント
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「情報疲れ」というストレス

 思えば、新型コロナも3年目に入り、少しづつ落ち着きつつあるなかではありますが、子どもへの接種をめぐり、接種を勧める声もあれば、少数ながら接種には否定的な見解もみられ、情報が多様化するなかで、何が正解かもわからず厳しい選択を迫られるなど、未だにストレスフルな状況が続いています。

 そんななか、今度は大国が他国に侵攻するという、日本人にとっては衝撃的な事象が起こり、当事国の犠牲はもとより、経済制裁などのあおりで世界中に火の粉が降りかかりつつあるという、新しい禍に見舞われつつあります。

 地理的には遠い国のことではありますが、日本にいる我々も看過できない中で、多種多様な視点から発信される「情報」という波にからめとられつつある方も多いかもしれません。

このように、環境の変化とそれによる情報は、解釈の仕方や取り入れる量や頻度によって、人のいつもの営みを「非日常」へと変え、いつものことがいつも通りにできない状態をもたらすこともあり、それは健康にとって大変大きい影響をもたらすものでもあります。

例えば、「どちらを選ぶべきか?」「何かしたいのに何もできない」、「または何をしたらいいのか見つからない」、という葛藤状況がもたらされ、それが長期化してくると、すぐに心身に影響するわけではないですが、地味に心身に蓄積されるストレスとなって、徐々に心身が蝕まれていく可能性もあります。

考えてみると、新型コロナも戦争(ウクライナ危機)も、「恐怖」や「脅威」であるわけで、その環境や情報に触れることは、自らや身近な人の「安全」に対しての「危機」と解釈されるので、意識化されなくても、それは心身にストレスとして影響しているはずなのです。

このように、いつもの生活に降りかかってきたパンデミックや戦争は、それそのものの害だけでなく、それに伴う情報によって、私たちをいつもの生活から切り離し、葛藤ストレスによって長期的にさまざまな健康上の問題や行動上の問題を引き起こしうるものなのです。

問題なのは、ストレスである感染や戦闘が物理的に遠く離れているとしても、このネット社会の中でスマホやタブレットなどいつも使う身近な媒体からリアルタイムで様々な情報が得られることによって、我々は常に「危機」のなかで生活をしていて、それへの対処で疲労している、ということなのでしょう。

これが現代の健康問題に大きい影を落としているのかもしれません。

情報から心を守ろう

よく言われることですが、SNSをやっていて心が疲れたら、一旦SNS断ちをすることも勧められますし、ニュース断ちでなるべくニュースを見ない、という方法もあるでしょう。

とはいえ、現代において「情報」を全く遮断して生活することはできないでしょう。また、情報そのものは生活の手段でもあるので、プロパガンダやフェイクニュースなどに注意しながら、できるだけ情報を取捨選択して、自分にとって最適な意志決定をすることが望まれます。

このように、情報との付き合い方、距離の取り方を工夫して、心を守ることが重要になってくるでしょう。

「情報」で心が疲れていると感じたら

カウンセリングを受けていただいている方からよくお聴きすることですが、ストレスフルな情報に触れて続けていると、次第に、全く自分に非はないのに、「罪悪感」が生まれてくることがあります。

災害などで生き残った人々にも同じような現象が起こることがありますが、他の地域の災害や戦争などを情報として受け取ることで、平穏に生活している自分が何か悪いような気がしてきてしまうのです。

そうなると、今までやっていた楽しみごとや穏やかな時間が悪いことのように思われ、そこから離れてしまうこともあり得ます。

こうしたこと自体は、人の苦しみや困難に共感するという、人の特性として当たり前に起こることであり、何も悪いことでも間違ったことでもありません。仕方のないことなのです。

ただ、それが「疲労」をもたらして、自己の健康を害しているとしたら、何か手を打つ必要があるでしょう。

情報から離れる

普段のカウンセリングの中では、ストレス源(ストレッサー)がはっきりしている場合は、まずはそこから距離をとることを検討します。

ニュースやデバイスがストレス源(ストレッサー)になっているのなら、前述のように、ニュースやデバイスからいったん、物理的に距離をとるということは有効でしょう。

スマホ自体を使わない、というわけにはいかないかもしれませんが、ニュースアプリを削除するなどして、なるべく目にしないような工夫をとることが大切です。

この場合、例えばいつもネットサーフィンやSNSに費やしていた時間を、何か別のことに振り替える必要があります。ストレスを高める情報ではなく、

  • ストレスを弱めて、楽しさや喜びをもたらす情報に触れる時間
  • あるいは体を動かす時間
  • 親しい人とコミュニケーションをとる時間
  • 趣味の時間など

に置き換えてもいいでしょう。

それは、自分に対しての「思いやり」「いたわり」の時間でもあります。

自分への思いやり

ニュースを見ない、情報から距離をとる、ということは、自分を追い詰め、苦しめている罪悪感から距離をとって、自分を思いやり、いたわることができるストレスフリーな時間を持つということです。

その方法についてはカウンセリングでもよく話題にするのですが、前述の「罪悪感」のお話の繰り返しになりますが、カウンセリングを受けていただいた方の中には、そのようにして、ある意味「目をつぶる」という対処することに対して、「苦しんでいる人が大勢いるのに、自分だけ…」と、何か抵抗感を持たれる方もおられます。

そのような時は、そうした受け止めをしていることそのものを受け入れ、苦しんでいる人に心を寄せながら、一日の中で少しの時間だけでいいので、「自分をいたわる、自分への思いやりの時間」を持つことをお勧めします。

お勧めの方法↓

(マインドフルネスの参考記事)

(セルフ・コンパッションの参考記事)

疲れた心には、カウンセリングを

もちろん、いたわりの時間としてのカウンセリングも効果的と考えられます。今自分の中で渦巻く不安や心配事を、安全な環境の中で開放することは大きな癒しになるでしょう。

コロナも戦争も、あなたのせいではないのです。苦しんでいる人に共感しつつも、あなたはあなたを守ってほしいと思います。

あなたにとっての「優しい時間」「癒しの時間」はいつ、どんな時ですか? 忙しいときでも自分をいたわる「スキマ時間」を作り、実践していただきたいと願っています。

お読みいただき、ありがとうございました。