認知療法

認知療法(Cognitive Therapy;CT)

1970年代に、精神科医のベックによって開発され、うつ病の治療として効果が認められたことで広く普及することになりました。(厚生労働省e-ヘルスネット・認知療法

現在においても認知行動療法の中心であり、第二世代の認知行動療法と位置付けられています。

※下は専門家向けの書籍です。

基本となるのは、セルフ・モニタリングと呼ばれる「記録を取ること」とその記録によって自分の内面を確認し、それに基づいて「認知」=「考え」を修正して、修正された新しい考えに基づいた新しい「行動」を試してみることで、考えと行動のパターンを適応的なものに変えていくという手続き(認知再構成法)です。

考えは「感情」や「体の状態」とも結びついていることから、「思考」「感情」「行動」「身体」の4つの状態を視覚化して表し、それに基づいて自己理解を図ります。

その自己理解に基づいて、変えられるところから変えていくことになりますが、認知療法の場合、それを「認知」=「思考」の修正によって行います。

 
例えば、
 
「また失敗してしまった」→(気分:落ち込み)
 
という認知と感情の流れを、
 
⇒ 失敗は成功の母だし。
⇒ うまくいかない方法を見つけたぞ。
⇒ 自分だけの失敗ではないし。
⇒ 50%はうまくいったところもあるし。
⇒ 繰り返さないためには○○しよう。
⇒ 今こそ新しいことを学ぶ機会だ。
 
と考え方を変えてみることで、その後に続く気分の変化を観察します。
 
→ (気分:○○)
 
 
同じように、
 
「このプロジェクトはうまくいくだろうか」→(気分:不安、心配)
 
⇒ まずはアクションプランから作ろう。
⇒ 手伝ってくれそうな人をリストアップ。
⇒ 困った時に助けてくれそうな人をリストアップ。
⇒ 「うまくいくうまくいく。」
⇒ 「うまくいく」から担当になった。
 
→ (気分:?)
 
無理やり変えることが目的ではありません。色々な考え方があり、その考え方によって気分が変わり、また、別の行動に結びつく可能性がある、ということについて、色々な視点から見直してみることが目的です。

そして、このような事を繰り返すうちに、自分自身の「考えのクセ」に気づく事ができます。

それが一般に、「認知の歪み」とか「認知の偏り」または「推論の誤り」と呼ばれる、思考を偏らせて気分を不快にする「思い込み」です。

このような思い込みに気づいて、それを「合理的でバランスの取れた」考えになるよう、「自分で自分の考えについて考える」という作業を行います。

ポジティブ思考ではなくバランス思考

注意点としては、やたらとポジティブに考える「ポジティブ思考」ということではなく、少し冷静に、客観性をもって合理的に判断したときに、今の自分の考えはどうだろうか?ということを考えます。「ポジティブ思考」ではなく、「バランス思考」を目指します。

したがって、「マイナスな(ネガティブな)思考」を否定するわけではなく、むしろそれを受け入れていく態度が必要です。
そのために認知療法で用いられる代表的な方法が認知再構成法です。

それを繰り返すうち、今度は、意識できる「思い込み」のより深い位置にあって、なかなか変わらない頑固な「思い込み」が見えてきます。

スキーマという頑固な思い込み

それが「スキーマ」とか「中核信念」などと呼ばれる、あなたの考えの根本(根っこ)にある、自分・他人、世の中を見るときにかけている「こころのめがね(フィルター)」です。

カウンセリングが進むと、やがてこのスキーマをあつかい、あなたの心にあって、自由な思考や行動を妨げている(ブロックしている)「信念」を和らげて、より自由で創造的な生活ができるように、アシストしていきます。

「認知の歪み」は、自分でもわかっているようでわかっていない場合が多いです。なぜなら、「歪んだ」状態が普通の状態として存在しているので、そのことについて外部から指摘されても、頭では分かっているようで、実際には気づいていないことがほとんどです。逆に言えば、それに気づけさえすれば、急速な変化が期待できます。

マインドフルネス認知療法

認知療法における認知再構成法をはじめとする技法もエビデンス・ベースドなことから一般的な方法として十分,現役です。

一方,近年は,マインドフルネスの考えに従って、「認知の歪み」にとらわれた状態からいったん距離を取る「脱中心化」というプロセスを原理とする「マインドフルネス認知療法」が普及しつつあり,あらたなアプローチ方法として提唱されてきています。

認知行動療法
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