リラクセーション法

認知行動療法

リラクゼーション法(Relaxation method)

リラクゼーションに関する技術・技法を幅広く研究、実践しています。

ここで説明するリラクゼーションとは,いわゆるマッサージ等ではなく、自分自身で日常的に行うことができるセルフケアのためのエクササイズです。

手軽にできて効果的な心身のリラックス法は,自分自身で日常的に行うことができるセルフケアとして最適です。

身体の心は密接につながっていますので、身体がほぐれると、こころもほぐれていきます。心がほぐれると体も緊張しにくくなり、良い方向への変化が起こりやすくなります。

筋弛緩法や自律訓練法、呼吸法、各種ボディワークなどを取り入れ、マッサージや整体のように治療者からの施術ではなく、自分自身の身体の操作によって筋肉の緊張をほぐして、柔軟な体に改善することで,心と体の調和したマインドフルな生活を目指します。

緊張性の頭痛、肩や首のコリといった身体的な症状の緩和に効果的で、不眠や不安の緩和も期待できます。

当所では、下記の方法に沿って、あなたの心と身体をほぐして、緊張を緩和できる手助けをさせていただきます。

呼吸法

ヨガや気功など東洋的修行において重要視されている心身の調整法です。様々な方法がありますが、できる範囲内から段階的に練習することが大切です。

呼吸の基本
  • 吸うが緊張、吐くがリラックス。
  • 自分のペースで、ゆっくり息を吐いてみましょう。息を吐ききったら、大きく、自然に、息を吸い込みます。少し止めて、ゆっくり細く長く息を吐いていきましょう。(深呼吸)
  • リラックスしたいときは、吐く息を少し長めにします。(長呼気法)
  • 息を吐くとお腹がしぼんで、息を吸うとお腹がふくらみます。(腹式呼吸)
  • 吐く息とともに、イライラや身体の疲れが身体の外に出て行く感じがでてくるといいです。吐く息とともに、身体の力が抜けていく感じ・・・。(イメージ呼吸法)

こうした基本の後に、次のような方法を用います。

数息~呼吸の回数を数える
  • 仰向けに寝るか、椅子に座る。座る場合は腰骨を立て、肩を落として、力を抜く。
  • 目を閉じた方が気持ちがいいと思う人は目を閉じる。
  • 息を吸い込んだときは静かに膨らみ、息を吐いたときは引っ込むのを感じながら、腹部に注意を集中する。
  • 吐く・吸うで一呼吸とする。吐く方(呼気)を長くする。それを10呼吸繰り返す。
  • 途中で数がわからなくなったら初めから。

呼吸による生理学的な効果もありますし、呼吸という動作に意識を集中することによって、こころの悩みを一旦わきに置いておくという態度を身につけることもできます。

呼吸法はマインドフルネス訓練においても中心的な方法であり、こうした基本的な方法を習得しておくと、こころの安定に対して様々なシーンで応用が利くようになります。その後、必要に応じてさらに高度な呼吸法にステップアップします。

筋弛緩法

原理

人はストレスにさらされると、レスポンデント型の条件反射の原理に従って、緊張が自動的に条件付けられます。

骨格筋(横紋筋)が収縮し緊張が高まると中枢神経系が興奮し、精神の興奮も高まり、自律神経系は刺激し続けられ、中枢神経系より再び筋肉群にも興奮刺激が送り返され緊張が亢進するという悪循環が形成されます。この結果、機能性障害が引き起こされ、最終的には器質的障害に進行すると考えられます。

これに対し、生理学者ジェイコブソンが、骨格筋がリラックスした状態では大きな音に対して通常起きる驚愕反応が起きないことを発見して以来、リラクセーションの心理・生物学的研究が始まりました。筋肉をリラックスさせた状態では、中枢神経系と自律神経系の両者において覚醒レベルを減少させることができるということから、ジェイコブソンは、不安が強いクライエントの治療において、深いリラックス状態を作るための方法として、漸進的筋弛緩法を開発しました。

ジェイコブソンの漸進的筋弛緩法は、身体各部の練習を1日から1週間以上の期間、毎日1時間以上という長時間の練習を必要とすることから、ウォルピが簡易法を開発し、効果を上げています。

発展

我が国においては、松原秀樹(1981,1983,1984)が九州大学心療内科において数多くの臨床実践を経て、より早く症状をコントロールしていく必要性から、ウォルピの簡易法に改変と工夫を加え、より効果的な弛緩訓練方法と指導方法を開発しています。

それはクライエントの姿勢やコリの感覚から筋緊張の特徴を同定し、適切な動作を用いて即効的にリラックス状態をもたらすもので、弛緩させるためにいったん「力む」ことから、積極的筋弛緩法と名付けられています。

身体各部を部分的に行う方法と、全身法と呼ばれる体全体を同時弛緩させる方法があり、必要に応じて使い分けていきます。

当所代表の小村は松原先生より積極的筋弛緩法を一通り学び、症例に対するスーパーバイズを10年にわたり受けてきており、その方法のほとんどを習得しています。

心身をリラックスさせて不安と緊張を和らげることで、多くの問題への応用が期待できます。特に、ストレスによる過緊張状態(疲れ)があるときのリラックスには効果が高いエクササイズです。

方法

筋弛緩法の一例:実施の要領
  1. 立つか座るかして,体の状態を観察しましょう。
  2. 両腕を前に出します(前ならえの姿勢)。
  3. 軽くこぶしを握り,徐々に力みを入れ,腕全体を力ませます。(力みは全力ではなく,7~8割程度の力で力みます。その方が効果的です。)
  4. ゆっくり肘を曲げ,脇を閉めます。
  5. 首を引っ込ませるように力み,両肩を持ち上げます。(このとき,肩ができるだけしっかり上がるように意識しましょう)
  6. 肩が落ちないように,胸を開いて肩甲骨の間を縮めます。
  7. 首を後ろに倒し,腰,背中もしっかり反り返ります。
  8. 奥歯を軽くかみしめ,(できる人は)両目をギュッと閉じ顔にも力みを入れます。
  9. その姿勢のまま5秒程度維持し,
  10. 最後に全身の力を一気に「ストン」と抜きます。
  11. 抜いた瞬間の体の感じを観察しましょう。
  12. リラックス感があれば,それが全身に広がっていくように意識します。
  13. 上記を3回繰り返します。

筋弛緩法の一例:ご注意
痛みや障害がある場合は行わないでください。動画もありますが,実施に際しては上記のほかにも留意点があるので,お試しになる場合はあまり力まず,軽い体験程度にとどめておいてください。専門家の適切な指導の下で効果が期待できます。ご自身の心身の状態にご配慮の上,ご自身の責任でお試しください。

自律訓練法

フォクト、シュルツ、ルーテらによって開発されたこころのコントロール法です。

下記のような自己暗示的なメッセージを頭の中で繰り返すことから、自己催眠と呼ばれることもありますが、暗示そのものより、落ち着ける環境の中でゆったりととらわれから離れる時間を作り、こころと身体をしっかりと「休める」ことが目的です。

リラックスした環境の中で、とらわれから離れること(受動的注意集中)により、変性意識状態と呼ばれる半睡眠のような状態になり、その状態には心身を整える効き目があることが知られています。

そのような状態を意識的に作り出すことで、気持ちがいらいらする、おちつかない、寝つきが悪い、ぼんやりして考えがまとまらない…などの心の不調から、肩こりがする、心臓がどきどきする、息苦しい、朝になるとおなかが痛くなる、頭痛がする…などの体の緊張からくる不調を改善し、ストレスに打ちかつ強い心身を育てる効果があります。

また、すでに健康な人でも、自律訓練法を習得することでますます心身の状態がよくなり、自己治癒力を高めて健康を保ち、勉学やスポーツに役立つことが知られています。

単に身体的な緊張をゆるめるだけではなく、身体に注意を向け「今、ここでの変化」を感じることで、「とらわれ」や「こだわり」または「~すべき」といった固定化された思考から抜けだし、適度に間をとった柔軟な思考を身につけることも期待できます。
(マインドフルネスとも関連が深い方法です)

自律訓練法標準練習

自律訓練法標準練習

《受動的注意集中:身体にぼんやりとした注意を向けます》

  • 背景公式: 「気持ちが(とても)落ちついている」
  • 第1公式(四肢重感): 「両腕両足が重たい」
  • 第2公式(四肢温感): 「両腕両足が温かい」

(以後、第3~6公式)

《消去動作(終了覚醒動作):練習で眠った心身を目覚めさせます》

このような、「公式」とよばれるメッセージを自分自身に送ることで、自然に体の力を抜いていき、余分な緊張をとっていきます。

練習を行っていくと、体や心にいろいろな変化が起こってきます(自律性解放)。体がピクピクしたり、しびれるような感じがしたり、不安な気持ちになったり、雑念が浮かんできたりするかもしれません。

しかし、これは悪いことではなく、心身のストレスが放出されているところですので、無理にとめようとしたりなくそうとしないで、そのまま受け入れるようにしていきます。

このような標準練習を行った後、必要に応じて上級練習と呼ばれる応用練習を行ったり、行動療法に組み込んだりすることで、特定の症状への効果を狙います。

※詳しい方法を書いた書籍などもありますが、用いてはいけない場合もありますので、必ず、専門家の指導の元で行うようにしましょう。
※幣所代表は日本自律訓練学会認定の基礎講習(標準練習)、上級研修(中和法、特定器官訓練、自律行動療法、黙想練習)を修了しています。必要に応じてリラクゼーション指導の際に実施します。

上記のような方法を有機的に用いて、心身の効果的なリラクゼーションを図ります。

カウンセリングとリラクゼーション法

カウンセリングとうまく組み合わせて行うリラクゼーションは緊張状態の緩和にはとても効果的です。

ただ、筋弛緩法などは即効的に筋緊張を弱めることができるので,人によっては効きすぎるのも問題となります。

体の緊張状態はある意味、心の緊張の表れでもあるわけですが、言い換えますと、心のしんどさを体のしんどさに置き換えるという対処を体が自然に行っている、ということでもあります。そこで、やみくもに、ただ緊張状態だけを緩和するために深いリラクゼーションを行うと、その体が行っている対処と反対の事を行うことになり、かえって心のしんどさが強調されるという結果になってしまうことも経験するところです。

体の緊張感はリラクゼーションで対処できることは確実なので、体のリラックスとバランスが取れるように、カウンセリングや認知行動療法の技法で心のしんどさを軽くしていくことと同時に,どちらかと言えば「補助的」に行っていくことが大切なようです。

そこで,当所では,ストレスに対処する方法としてリラクゼーション法を積極的に用いますが、やみくもにリラックス状態を作り出すのではなく、松原による積極的筋弛緩法の原理に則り、全身の筋弛緩を促すと同時に、呼吸法、姿勢のコントロールなどを通じて、緊張と弛緩という身体の状態への気づきを得ていただき、それをきっかけとして、あなたご自身がセルフコントロールの工夫ができるようになることを大切にしています。

認知行動療法
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