働きすぎを回避して自分をいたわるための思考法

メンタルヘルス

こんにちは。カウンセラーの小村です。

働き方改革,長時間労働の是正,ワークライフ・バランスなど,労働者が健康を維持して働くことができるように様々な提言がなされていますが,その一方でやはり,自分を犠牲にして体を壊し,戦線を離脱する労働者も少なくありません。

仕事をがんばることは大切なことですが,仕事のし過ぎが逆に健康を害したり,仕事の生産性を低めてしまっては本も子もありません。

健康と生産性を維持して長く元気に働くために,どんなところに注目したらいいのでしょうか?

今回はそこに焦点を当ててみたいと思います。

うつを引き起こす「こころのガス欠」

仕事とプライベートのON―OFFによって,仕事の疲れをその日のうちに癒せたらいいのですが,労働時間が長くなると,その切り替えがままならなくなり,疲労をため込んでいってしまいます。

蓄積した疲労は仕事の能率をさげ,ますます長時間の労働を強いて,さらに疲れが蓄積していくという悪循環をもたらします。

実際,うつを発症するときにはこうしたパターンが多く見られます。

エンジンはかみ合わず,空転しているだけで,燃料は減っているのに前進していない状態になります。(実際は前進していても,進んでいないように感じることもあります)

やがて,ガス欠になると,そこでぷつりと糸が切れたように,動けなくなってしまうのです。

がんばってきたのに,結果が出ないで気分はどん底に落ち,何もしたくなくなる。
辛いですよね。

疲労で認知機能が低下し,能率が落ち,明らかにパフォーマンスが低下して何も進んでいないのに神経をすり減らしてしまうのは,大事なエネルギーの浪費,漏電になり,うつの呼び水になることは明白です。

なら,一度エンジン停止して休めばいいのに

と思いますが,

認知機能が低下しているときは,そもそも,「疲れて能率が下がっているので,もう仕事は切り上げて早めに休もう。」とか「仕事のやり方を見直そう。」というような,当たり前の合理的な思考そのものがもはやできにくい状態になっているのですね。

むしろ,「進んでいないのだから,もっと頑張らねば…!」と考えてしまいます。

そして,どんどん深みにはまり,気が付いたらうつの諸症状が生じるところまで到達していたり,うつ病にまで至らなくても,心身に何となく不調を感じるなどの状態が続いたりします。

こうなると,「わかっちゃいるけど,やめられない」状態に陥り,なかなかそのパターン(エネルギー浪費型の働き方)から抜け出せなくなってしまっています。

そのパターンを変えるには,ある一つの事実を認識しておくとよいと思います。それは…

エネルギー浪費型の働き方の意味

成果が上がらないのに働きすぎて疲れをためる,ことそのものはデメリットなのですが,実はこの時,仕事にかかわっていることによって何らかの(大抵は『安心』という)メリットを得ているのです。

どんな不合理なことでも,

「人はメリットのないことはしない」

のです。

どんな形でも,仕事をしているということそのものが『安心』になります。視点を変えると,仕事から離れることで「不安」になってしまうのです。

つまり,仕事から離れることに対しての不安を回避するために仕事にかかわり続けることで相対的に『安心』を得る,という誤った動機づけによって仕事をするという構図になっているのです。

さらに,相対的な安心が仕事の動機になっていることによって,

本来なら仕事から得られるはずの達成による充実感や満足感といった「喜び」を得ようという動機付けが失われていってしまうのです。

エネルギー充填型の働き方へ

人の行動・活動には,何らかの「喜び」が付随することで心理的な満足感が得られ,次の活動へのエネルギーが充填されます。

つまり,

「人はメリットを積極的に得るために行動する」

のが本来です。

今の自分の仕事によって,何が達成され,どんな喜びが得られるか,常にその視点で考えられると,エネルギー浪費型の働き方を避け,エネルギー充填型への働き方へシフトしていけることが期待できます。

そのために,仕事に対しての見方を変えてみましょう。

エネルギー充填型の考え方

仕事の能率,効率化に関しては,「to do リストを作る」,「タスクの優先順位を決める」などのマネジメント法も重要なのはご存知の通りですが,それとは少し異なり,考え方の視点を変えることについて見てみましょう。
できていないことを減らす → できていることを積み重ねていく

単に考え方の視点の違いにすぎませんが,これだけでも,自分の行いに対しての力強さを感じることができるかもしれません。

「できていないことを減らす」

崩し将棋みたいなもので,乱雑に積み重なった将棋をひとつずつ神経を使って「崩していく」ようなイメージです。

終わった後には,神経使った割には「何も残らない」のです。

実際,すべて崩し終わったら爽快かもしれませんが…そのプロセスで考えるのは,「(できていないことが)まだ残っている」ではないでしょうか。

「できていることを積み重ねる」

プラモデルのようにある形を作り上げていくプロセスというようなイメージです。

出来上がったらできたものの形を眺めることができ,それはいつまでも残るものです。そして,そのプロセスで考えるのは「これだけ(ここまで)できた。」ではないでしょうか。

できた形がイメージできていると,到達までのプロセスに喜びを感じやすいといえます。

そうして積極的に「喜び」を感じることは,自分に対しての「いたわり」であり「承認」です。

このような「できていることに焦点を当てた思考」を持てていると,積極的に自分にご褒美を与え,承認をすることができます。

そうすると,もはや効率的でない,疲労を積み重ねるだけの自分に優しくない働き方とは縁を切る手始めになるのではないでしょうか。

エネルギー充填のために

今のご自分が,「エネルギー浪費型」になっているなぁ,とお感じの方は,積極的にエネルギーを充填し,喜びを得る体験を思い出すために,少し思い切った行動が必要かもしれません。

まずは,「仕事から離れる不安」を恐れず,無理やりにでも仕事を離れて思い切り,「好きなことややりたいことをやってみる」のはいかがでしょうか。

これだけだと単なる「プラス思考の勧め」ですが,本質は,「仕事から離れる不安」を受け入れることにあり,そこを突き詰めることで,このプラス思考がより,実のなるものになります。

 

それについてはまた書きたいと思います。

 

今日もお読みいただきありがとうございました。

メンタルヘルス
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。
シェアする
小村 緩岳をフォローする
カウンセリングオフィス 広島心理教育研究所