ストレス低減のためのセルフ・カウンセリング

カウンセリング

認知行動療法のなかでも用いられるように、心の中で自分と対話するということは、意外とメンタル面でのよい効果をもたらすことが期待できます。

自分の心のつぶやきに耳を澄まして、それに対して少し冷静に受け答えをしてみる。それだけでも問題解決の糸口になったり、気分が幾分かでも改善することもあるでしょう。

日誌や記録のように、それを文字に書き起こしてみるのも効果的です。

詳しく行うにはやはりカウンセリングを受けるのが手っ取り早いですが、いわゆるセルフケアの範囲でセルフ・カウンセリングとして行ってみるのも、メンタル面のケアに役立つと考えています。

そのための「きっかけ」となる情報をご提供できればと思い,セルフ・カウンセリングの一環となればと今回の記事をまとめてみました。

よろしかったら、最後までお付き合いください。

一日一瞬 ~今ここにあり~

「一日一瞬」とは ~紛れもないあなた自身を取り戻す瞬間~

一日一瞬とは聞きなれない言葉ですが,それもそのはず、心配事が多い中でも,ほんの一瞬だけでもそこから離れて本来の自分を取り戻す,という意味で小村が勝手に作った言葉です。

「一期一会」や「日々是好日」などと同じような意味になるでしょうか。いわゆるマインドフルネスが目指すところでもあります。

毎日が平穏で、安定して過ごせたら…とは誰しも思うことですが,平穏な心の状態がずっと続く,ということは現実的ではないでしょう。

ある意味、人はストレスの海の中を泳がなければならないわけです。

ストレス過剰な日々は、環境への適応、すなわち今いる場所になじむために、自分をある程度犠牲にすることで乗り切っているという側面があります。それはそれで、処世のためには必要なことだといえます。

私たちは、社会の中で「仮面」を被る必要がありますが、仮面を脱いだ本来の自分も大事にする必要があるのです。

ただ、仮面をかぶった状態が長期にわたったり、ストレスが強すぎてしまうと、その「かりそめ」の自分があたかも本当の自分であるかのようにふるまい始めることがあるのです。

そうすると、ストレスの悪循環が始まります。休むことを忘れ、ひたすら頑張り、心も体も疲弊して、気が付いたらもういっぱいいっぱいで、対処しようというゆとりさえなくなっていきます。

それは、ぜひとも避けたいところですよね。

心を守る「逃げる」という選択

私たちは、あらゆる状況で「闘うこと」も「逃げる」こともできます。「逃げる」とはこの場合は「癒し」や「休息」と捉えてください。何も手を打たず、フリーズすることは避けたいものです。

どんなにしんどくても、闘い(がんばる)のほかに「逃げる」という選択肢があることを忘れない、ということが、心を守るために絶対的に必要と思います。

心がざわついてきたことに気づいたら,「ちょっと間をとり」呼吸を整え,次のように自問してみましょう。

こころをニュートラルに!
  1. 今自分は疲れているか?
  2. そうなら、何に、どんなふうに疲れているのだろう?
  3. 何をすべきか? または「願わくば」何をしたい?(仕事か休息、あるいはその他か)
  4. そうしたらどうなるだろう?

それは、一旦その場から退き、自分と対話することを通して「流れ」から脱し、紛れもない自分自身を取り戻す、という瞬間に他なりません。

「一日一瞬」には、その一瞬の気づき、本来の自分という一瞬の回顧を、何度でもつなげていく・・・という考え方で,心配事の多い日常を乗り切れたら,という思いを込めています。

人の心は,デフォルトの状態だと,どちらかというとネガティブな感情をもたらす「雑念」が多く浮かぶと言われています。

一日一瞬を目指すには,あなたにとっての「ポジティブな感情」をもたらす対象を、能動的、意識的に想うことで、ニュートラルな状態を作ってみる、ということが必要です。

「逃げる」わけではありません。「本来のあなた」を取り戻し積極的に心を守るためです。

実践! 一日一瞬

基本的には上述のように自分と対話することが前提です。

そのうえで、自分にとっての「安心材料」「心理的に安定・安全・安心をもたらしてくれるもの」との接触を習慣づけておくことが大切なので、あらかじめ下記のようにして、日ごろから「積極的な休息」を心掛けておくとよいでしょう。

一日一瞬のための4つのステップ
  • ステップ1: まずはストレス対処法のリストを作りましょう。その対処法とは、あなたがあなた自身を取り戻せる「穏やかで前向きな出来事やイメージ、考え」であることが望ましいです。そのリストは完璧である必要はなく,むしろ常に書き加えたり書き換えたりできる「未完成」の状態でかまいません。(下の図をご参照ください)
  • ステップ2: そのリストを印刷して掲示または持ち歩いたり,スマホのカレンダー機能を使ったりなどして,いつでも確認、リマインドできる形にしましょう。
  • ステップ3(使い方①): いつそれをやるか,という予定を生活の中に「ちりばめる」ように組んでみましょう。実行できれば何よりですが、たとえ実行できなくてもいいのです。大事なのは,常に心のどこかに「ひっかけておく」ことです。「忘れない」ということを大切にしましょう。
  • ステップ3(使い方②): 心がざわついてきたことに気づいたらいつでも,呼吸を整え,可能なら場所を変えたり、水を一口補給し、そのリストの中にある、穏やかで前向きな出来事やイメージ、考えを、ほんの一瞬、思い浮かべてみましょう。

※一例として下記をご覧ください。

(例:小村のリスト)実際はもっと多いです。

まず、このようなストレス対処法を通して仕事とプライベートを切り替えて、解決のために使ったエネルギーを絶えず補給することが、心を守るために大切です。

がんばりすぎにみられがちな「欲しがりません,勝つまでは。」ではなく,毎日できる小さい楽しみ事やリラックス習慣を持ち,こまめな気晴らしで自分を慈しみ,本来の自分を思い出し,くれぐれもエネルギー切れにならないようにしましょう。

「私の傍らには常に安心が」という心の状態を作ることで、ストレスを中和してしんどさを緩和する手助けになるでしょう。

自分を守る「強さ」を持とう

誤解しないでいただきたいのは、これは「意識の低さ」とか「脆弱さ」を表すわけではありません。仕事や職場からただ逃げ出すということではなく、仕事や職場の「領域(範囲)」を決めておく、ということですね。

仕事の領域が個人の領域を侵食し始めるようであれば、破綻する可能性が出てきます。そうなったり、そうなりそうであれば、ご自分の領域、範囲を取り戻す、守る、ということが必要であり、それは、むしろ「強さ」であると考えます。

自分自身をいたわれる、思いやれる、ということは「強さ」なのです。それだけでなく、自分をいたわるということは、仕事や周囲の人々へのいたわりの気持ちを持つということにも通じます。

目まぐるしく変わる多忙な生活の中でも、自分へのいたわりを忘れることなく、一日の中で一瞬でも,機会をとらえてそのことを思い出し、自分を取り戻すようにできれば,ストレスが多いなかでもうまくストレスの海を泳いでいけると思っています。

  • ストレスの影響を受けるのは当たり前のことです。自分の心と体と対話し、疲れているようなら自分へのコンパッション(思いやり,慈悲の気持ち)を持ち,セルフ・カウンセリングを試みてみましょう。
  • それでも解決困難な場合は、専門家への相談・カウンセリングも大切なセルフケアの一つです。我慢して症状を悪化させてもメリットはありません。疲労やストレスでしんどさを感じたら,恥や罪と思わず,早めに相談しましょう。

お読みいただき、ありがとうございました。