マインドフルネス

認知行動療法

マインドフルネス(Mindfulness)

マインドフルネスとは,「心を今この瞬間に集中する」ということを意味します。

例えば,何かをしているときに,あれこれと色々なことが頭に浮かび,「心ここにあらず」の時,「ハッと我に返る」ことがありませんか?

まさにその瞬間を「マインドフルネス」といいます。あちこちさまよう心が「今,ここに戻ってきた瞬間」のことです。

そういう瞬間を増やし,さまよう心を最小にすることで,人は合理的で計画的な行動が増え,パフォーマンスが向上することが分かってきています。

マサチューセッツ大学医学部准教授(当時)でもあるジョン・カバット・ジン博士のマサチューセッツ大学医学部メディカル・センターストレス・クリニックでの実践をもとにした著書、「マインドフルネスストレス低減法」(北大路書房)により日本にも紹介され、知られるようになりました。

マインドフルネスストレス低減法
マインドフルネスストレス低減法

マインドフルネスは禅や瞑想などの東洋的修行法のエッセンスを凝縮した、「古くて新しい、こころの取り扱い方」として現代によみがえった「癒し」のメソッドです。

また、それを発展させたシーガル、ティーズデール、ウィリアムスらによる「マインドフルネス認知療法」(北大路書房)が紹介され、うつ予防・治療の新しい方法として認知されてきています。

マインドフルネス認知療法[原著第2版]
MBCTのバイブルが,より精緻かつ網羅的に内容を充実させ新装改訂版で再登場。プログラムに事前面接,終日リトリート,フォローアップ集会を追加し,重要要素であるインクワイアリーや思いやり・自己への慈しみ,呼吸空間法に関しても章を新設。研究・実践...

マインドフルネスは最新の認知行動療法の中でも最も大切な技法とされており、主として「瞑想」や「呼吸法」などによってその態度を涵養していきます。

マインドフルであることで、過去や未来の「とらわれ」から脱し、「今、ここで」の体験に焦点化することができます。

とらわれをなくし、本来の「穏やかな心の状態」を取り戻すことで、現実の物事や出来事に対しても一定の距離(間)をとりつつ、自分本来の実感にもとづいた適切な判断による適応的な行動が促進されます。

マインドフルネス・トレーニングの一例

毎日,習慣的に行う定型のトレーニング。

※効果を感じるには,ある程度の期間のトレーニングが必要です。

  • (集中瞑想)呼吸への注意集中。呼吸にかかわる全ての瞬間に注意を向ける。
  • (観察瞑想)全身への注意集中を行い,身体各部の「感じ」に同時に注意を向ける。
  1. 目を閉じて、全身への注意集中。身体の「感じ」を感じます。
  2. 呼吸への注意集中。呼吸にともなう身体の動きを感じる。
  3. 目覚めのエクササイズ

こうした定型的なトレーニングも大切ですが、日頃からマインドフルであることを意識しながら生活する日常的なトレーニングもできます。

日常的にもマインドフルネスを意識してみよう。

例えば、

  • 食べる
    「干しブドウ」のエクササイズと呼ばれるものがあります。干しブドウを食べるという、いつもの行為を、一つ一つのことに能動的な意識を向けて行う、というエクササイズです。食物の味だけでなく,見た目,香り,温度,舌触り,のど越しなどを感じながら,食べるときの口や舌の動きなど,食べるという行為にかかわる一つ一つのすべての瞬間に注意を向けます。これを、食べる機会ごとに、少しだけ意識して行ってみるだけでも、マインドフル体験ができます。
  • 歩く
    歩く、という動作も、脳にプログラムされた通りに普段何気なくやっている動作です。その動作に、少しだけ能動的な意識を向けます。そして、身体を動かすことで感じられる身体の感覚や、身体各部の動き,重心の移動,地面を踏みしめる足の裏の感覚など歩くという行為で感じられる全ての瞬間に注意を向けます。
  • 書く
    ご自分の「名前」を、線を一本一本意識し、はらいやはね、止めにもしっかりと能動的な意識を向けて、文字通り「心こめて」書いてみましょう。

なんでもないことのようですが、このようにふだん何気にやっている動作に能動的な意識(注意)を向けることで、「今」という瞬間に集中することができます。

どんなときも「マインドフル」な気持ちを意識すると,日常的なトラブルにも対応しやすくなるかも。

マインドフルネスとは「注意」の使い方

別の言い方をしますと、注意を意識的に扱うことで,心と身体をオートマティックな制御からマニュアルで制御するためにチェンジする瞬間を持つ、ということです。

そうしますと、頭の中を駆け巡り、「あなたをからめ捕る様々な思い(=自動思考)」から離れて、すこし俯瞰した客観的な視点から物事を判断する(観察者としての自己)習慣をつくることができます。

認知療法ではこれを「思考の修正」という、思考内容を直接扱う方法で行いますが、その方法だと、考えの「内容にとらわれれる」ことになりがちで、治療が停滞することがよくおこります。

マインドフルネスは、いったん、「何かほかのもの」に自分の能動的な注意を向けることで、繰り返される考え(思考の反すう)からいったん離れ、その「内容への囚われ」から解放するプロセスがかえって思い込みをやわらげ、不安やうつといった不快な感情を軽減することが見込まれます。

人の悩みとは、大抵、頭の中で起こる「過去の想起」か「未来への不確かな予測」です。

それは不快なものですが、現時点「今」においては、頭の中で生じている「イメージ」「思考」に過ぎないので、頭の中の過去や未来から「現在」に戻ってくれば、その悩みは消失するはずのものなのです。

ただ、マインドフルネスは,単に「気をそらしたり」「現実から逃避」をするわけではありません。

マインドフルネスを練習すると,頭の中の想像から「今」という現実に戻り,苦悩を和らげることが期待できますが,そのためには,苦悩を ”あるがまま” に受け入れていくという柔軟な態度で臨むことがポイントになります。

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