夫婦関係にまつわる問題(DV、セックスレス、不仲など)
夫婦関係に関してのご相談も多く寄せられますが,正直,かなりこじれてしまった状態になってからのご相談も多く,その場合、解決が容易ではないものがほとんどです。
メンタルヘルス相談全般に言えることですが、「もう少し前の段階だったら…!」 とよく思います。
実際、夫婦間には様々な問題が生じます。問題があって当たり前で、ない夫婦などないでしょう。
単に仲が悪くなったり、子どもの育て方についての意見が対立したり、そもそも価値観があわないなど、よく言う「性格の不一致」という形で、葛藤を抱えているご夫婦は多いのではないでしょうか。
関係がもつれる背景として,一般書などでも指摘されていますが,「男性脳と女性脳」の違いという,いかんともしがたい壁の存在は大きいでしょう。
そもそも同性同士でも心の働きは千差万別であり,価値観が本当の意味で一致することはあり得ないでしょう。人の容姿や性格に同じものが二つとしてないのと同じです。
それに加えて,男性と女性ではそもそも脳の働きに違いがあるという,ある意味決定的な差があるわけです。
したがって、それは現実的な、生物学的,医学的な事実として止めておく必要はあるでしょう。
これらに端を発する小さいボタンのかけ違いはしょっちゅう起こると思いますが、それらは自然に修復されることも多いでしょう。
ただ、それが拡大することによって,日ごろのコミュニケーションが希薄になったり,感情をぶつけあったり、セックスレスに陥ったりすることによって、夫婦の危機といった状態に陥ることも増えてくるでしょう。
さらには,DVやモラハラなど,一方が理不尽な苦痛を味わい,単に夫婦関係の問題というではなく,健康問題や生命にかかわる問題にまで至ることもあるかもしれません。
夫婦仲がうまくいかない要因とは
実際にいさかいになっているご夫婦のお話を聞くと,それぞれの話は間違っていないことがほとんどで、妻の側の言い分、夫の側の言い分はそれぞれもっともで,それはいつまでたっても平行線であり,なかなか交わらないわけです。
コミュニケーションがそれぞれの独り言になっていて、相手に伝わっていないのですね。
ただ,一度は(一時期は)交わったからこそ一緒になったわけなのに,それが解離してしまったのには,どんな原因があるのでしょう。
今までの経験上からは、例えば、
夫婦仲がうまくいかないときによくある8つの要因
などが考えられるかもしれません。
これらは短期間の間に、もしくは長期間の積み重ねによって、関係を蝕んでいく要因となるでしょう。
そもそも,もともと思考法や価値観に違いがある者同士が共同生活をするわけですから,お互いがお互いを認め,尊重しあう,心理的安全性が確保されたコミュニケーションは何より重要であるはずなのですが、上記のノーグッドな要因が重なり、すれ違いが拡大していっているのだとしたら…。
解決には,何らかの手段でお互いにコミュニケーションを図る努力や工夫をし,どちらもが心理的に脅かされることなく,安全な気持ちでいられる関係性を再構築することが必要といえるでしょう。
大事なのは,お互いの関係の中での心理的安全性。
夫婦関係が複雑になる理由
夫婦(家族)は距離が近すぎるため、コミュニケーションがとりやすい,とよく誤解されますが,親子関係も同様に,距離が近すぎるとお互いの思いが強すぎて,自分と人(配偶者)の問題を客観視できなくなっているため、いちどすれ違うとすれ違いが行き着くところまで拡大されてしまう、ということがよくあります。
仕事や,友達付き合い,近所づきあいでやっているような社交性をなぜか発揮できないのが,夫婦関係や親子関係です。
したがって,結婚前のように,お互いを最も大切な「他人」として接することができれば,解決に一歩近づけるかもしれません。
壊れた,壊れかけている関係の中で,簡単に離婚が出来るものなら、その決断が出来るものならそれでもいいといえるのですが、そこでまた新たな葛藤が生まれ、悩みに悩む方々も多いことでしょう。
解決には,まずはお互いのクールダウンと,ある意味での「決意」も必要でしょう。
関係改善のために点検すべき4つのこと
1.別れる。
2.関係を続け,変えられる部分を変える。
3.関係を続け,変えられない部分を受け入れる。
4.関係を続けるが,あきらめて状況が悪くなるようなことも続ける(何もしないという選択肢)。
(上記は左記文献からの引用です。)
ラス ハリス (著), 岩下 慶一 (翻訳) (2019) 相手は変えられない ならば自分が変わればいい: マインドフルネスと心理療法ACTでひらく人間関係 筑摩書房
ざっくりと,「続けるべきか」「別れるべきか」という選択をまずはすることになるでしょう。その選択権はあくまで自分にあります。
ただ,別れると決めても,その前に,2や3のように続けるための努力や工夫を最大限試みてみることも必要でしょう。「それでもだめなら,別れる。」と,別れる選択肢をより確信をもって選択できるでしょうから。
もちろん,4だけはぜひ,避けていただきたい選択肢になります。4を選択すると,ネガティブ思考や感情にとらわれ,他者を責め,依存的になり,うつや自暴自棄になりがちで,下手をすれば人生を損なうことにもなるでしょう。
上記は夫婦のどちらかが一方的に行うより,お互いが同意のうえで,行えればなお効果的でしょう。
まずは、それぞれの思い、意志を尊重し、お互いと自分を客観視して考え直す時間を作っていただければと思います。
※ただし,暴言や暴力を伴うDVやハラスメントがある場合,もはやその段階でない場合もありますので,そうした時は,行政や警察なども含め,第三者に相談して,客観的な意見をもらうことが先決であることは心にとどめておいてください。
それにしても、ここからは個人的なつぶやきになりますが、双方に対等なコミュニケーションが成立していれば、そう、めったなことにはならない気がします。
それは、夫婦仲がうまくいく、という意味ではなく、うまくいかなければ、割とあっさり「離婚する」という選択肢がスムーズに成立する、ということです。
それも一つの解決の形といえるでしょう。
一方、対等なコミュニケーションが存在しない場合、すなわち上記で挙げた「夫婦仲がうまくいかないときによくある8つの要因」に端を発するアンバランスな関係があるときは、うまくいかない状態が長く持続してしまう、ということが問題を複雑にしてしまうということがあります。
夫婦関係を対等にすることが関係修復の第一歩
端的に言ってしまえば、お互いがお互いに「してあげている」という意識を持つことによるのはないでしょうか。
確かに、それは事実でしょう。ただ、もう一つの事実としては、お互いに「してもらっている。」ということです。
この後者の意識を忘却することがなければ、「感謝」が生じ、関係を持続させる動機づけになるでしょう。
これを「give and take」と表現してもいいですが、妻も夫も、一方に偏らず、両方をしっかり意識の上に置いておくことが必要な気がします。
具体的には、
共働きなら当然、家事は分担です。
どちらかが専業主婦(夫)なら、稼ぎ手の年収の半分はパートナーの家事労働分の働きと考えましょう。
そうすると、稼ぎ手の側からは、「稼いであげている」という意識とともに、パートナーあってこそ労働を維持できると「してもらっている」意識をもつことになりやすいでしょう。
一方,パートナーの側からは、家事を行うことが明確に自分の仕事(労働)と認識できるでしょう。そうすると,家事労働をすることの意味を感じることができます。専業主婦(夫)にありがちな、「負い目」を弱めることもできるでしょう。
それにより、家事労働を「してあげている」という意識とともに、働いて「稼いでもらっている」という意識にもなりやすいのではないでしょうか。
このように、関係を対等化するよう意識することで、お互いを尊重し,思いやり,いたわり合う関係になれるのではないでしょうか。
そもそもこじれてしまっている関係の中では難しく感じるかもしれませんが,ご夫婦の関係がうまくいっていないと感じるなら,一度カウンセリングなどで整理を図るのも一つの方法だと思います。
最後に,夫婦関係にお悩みの方にお勧めの書籍をご紹介いたしますので,ぜひご一読されてみてはいかがでしょうか。(※kindle版ですが書籍版もあります)
最後までお読みいただきありがとうございました。