株価も乱高下すると経済が混乱しますが、気分の乱高下は生活を混乱させます。株価をコントロールすることは一般人には無理ですが,自分の感情のコントロールはできる可能性があります。
感情(気分)のコントロールはカウンセリングの主要なテーマの一つですが,適度なところで維持するためには,どのようなことを意識したらいいのでしょうか。
気分が上がり下がりする理由
人の気分が変わる条件には様々なものがあります。
環境的なストレス、ホルモンバランスなどの身体的な変化、それらと関連して季節の変化、その時の行動、ものごとに対しての極端な考え方などなど、およそ、生活していたら逃れられないものばかり。
気分をコントロールするには
「気分」は、現在の自分の環境的、身体的、心理的な状態によって生じる主観的な体験だとすると,気分の変化は自分のいまの状況を把握するためのバロメーターであるともいえるでしょう。
言い換えると,気分がよくないなら,そのうちのどれか,あるいはすべてにおいて,「よくない」ということになるでしょう。気分が高くなりすぎるなら,それを引き起こすどれかの要因があるのでしょう。それは当然のことです。
そして,それらがいつもいつも「完璧」であるということはほぼあり得ないといえるのではないでしょうか。
すなわち,「気分の乱高下」に悩むなら,まずは気分が移ろうこと自体は誰にとっても仕方のない事であって,何も気に病んだり罪悪感を持つ必要はないということ,すなわち「気分の変化を受け入れる」ことをまず,意識しましょう。
たとえそれが,怒りや悲しみ,恨みやねたみ,といったネガティブな気分(感情)であっても,それを否定せず,そう感じていることに「気づいて受け入れる」ということが大切です。
そうすると,「上がろうとしている」とか「下がろうとしている」といったちょっとした兆しにも気づきやすくなるでしょう
そして,気分の移ろいに気づくことができれば、積極的・前向きに,気分を調整していこうという意識も生じやすく,具体的な行動変容をおこすきっかけにもなるでしょう。
すなわち,「気分の変化に気づいて受け入れる」ことが,「気分を保つ」ことにとって何より大切であるということですね。
セルフモニタリング
それには、まず、「セルフ・モニタリング」をしてみましょう。気分の変化,乱高下した時の「状況」を振りかえって整理してみることです。
カウンセリングのなかでは,認知行動療法による生活(活動)記録表という記録表によって、日ごとの気分とその時の状況(行動や出来事,時間帯など)についての記録をとることを推奨しています。
そうして,気分の変化と関連のある状況を整理していくのですが,例えば「うつ」や「不安」が強い人は,一日を押しなべて 「悲しい」「落ち込んでいた」「しんどかった」のように一面的に評価しがちです。しかし, たいていの場合,気分は一日の中でもかなり変動するものです。
楽しかったことや,うれしかったこと,少しでも不快な気分が緩和されていた時間や行動もあるかもしれません。実は,一日はいろいろな気分に彩られているものだ,ということに,こうした客観的な記録を通して,気づきを深めていくのです。
ただ、これを毎日つけることはかなりの労力が要ることでもあります。
カウンセリングにおいては「宿題」として記録をつけていただき,それに対してのフィードバックを行うことで,継続の手助けをさせていただきますが,(もともと日記をつける習慣があるのであれば別ですが)正式な治療やカウンセリングを受けている状況でなければ、継続するのは難度が高いかもしれません。
そこでもしセルフでなさりたいのであれば、「三行日記」などのちょっとしたメモ程度でもいいので、気分が高ぶった時、落ち込んだ時の周囲の状況も含め、少しだけでも振り返りをしてみることをおススメします。
そして,気分の「高い」「低い」を (+5)—–0—–(-5)のような「数値」で表現するとより効果的です。
この時大切なのは、頭の中で考えるだけでなく、紙に「書く」ことです。書くことで、頭の中の問題が「外在化」され、整理されていくとともに、内省が深まります。
くれぐれも、「よい・わるい」といった評価や「またくりかえしてしまった」というような後悔ではなく、状況への気づきとその後の対処のためにただ記述する、という客観的な視点で考えることにご注意ください。
気分をコントロールする対処法
そして、次に、「対処法」を考えます。長期的には、環境調整によって身体的負荷を適度にして身体面の調整をしたり,気分の安定化に役立つエクササイズ,物事をバランスよくとらえるためのカウンセリング(認知療法)など,複数の取り組みを行うことで気分の安定を目指します。
気分のコントロールを目指すカウンセリングにおいては,ストレスマネジメントやリラクセーション・トレーニング,マインドフルネス・トレーニング,行動分析学やポジティブなマインドセットのためのエクササイズなど,多彩な視点からのアプローチを行うことになります。
生理的・行動的対処
気分が大きく変わるときには、ほぼ同時に身体的な変化が起こっています。厳密には,身体的な変化が「気分」という主観的な体験を生じさせる大きい原因となっています。
それは,生物としての普通のはたらきですが,人はその高度な思考力によって,生じた気分の変化をコントロールすることができるのです。
ただ,身体的な変化が思考を「抑制」または「偏らせ」たりすることで,気分のコントロール力が低下してしまうこともあります。
そうなると思考で気分をコントロールすることは難しくなるので,身体的な状態を調整することで気分をコントロールできるということも,ぜひ心にとどめておきたいですね。
具体的には,特に,呼吸を整えることが有効です。呼吸に意識を向けて「呼吸法」を試みることによって、自律神経系の調整による生理的な鎮静効果とともに、思考力を取り戻すための「間」を取ることができるのです。
この「間」を取ることはなにより重要です。
「間」とは時間的・空間的な「距離」と言っていいでしょう。すなわち,「時間を稼ぐ」ということです。したがって,もし可能なら,「場所を移動する」のもいいですし,「水を飲む」のも,「間」を取るという意味では呼吸法と同じと言えるでしょう。
- 呼吸法・マインドフルネス
- (習得済みものがあれば)リラクゼーション法
- その場を離れる(場所を移動する)
- 水(飲み物)を飲む,または食べる
- ヨガのポーズとか背伸びなど違う動きをする
- 親しい人に電話(ラインやメールなど)をして話す
- etc
※生じている「気分の種類」によって工夫の余地があります。
こうした身体的コントロールは非常に効果的です。気分の変化(またはその兆し)に気づいたら,できるだけ,上記のような手段で思考を取り戻して冷静さを取り戻すまでの時間を稼ぎましょう。
他にも、いろいろとバリエーションを増やせるとよいでしょう。
これらは,災害や事故など,突発的に気分が「急激に」変化するような事象に遭遇した場合の備えとしても役に立つと思います。
思考からの対処
「セルフモニタリング」によって振り返りができ,内省が深まると、自然と「この時にはこうしていたらよかった」「こうだったらよかった」など、いろいろと考えが巡るでしょうけど、「自分を責める」考えは一旦わきに置いておいて、「いまだったら、どのように対処できるのか、しているのか」考えてみましょう。
あらかじめ対処について考えておくと、イメージトレーニングになり、とっさのときに対処しやすくなります。また、「対処できる」という可能性が少しでもあるだけで、気分は安定することが知られています。
今の状況や心のつぶやきなどを「書く」
どちらも、少し練習が必要ですが,これらを並行的に実施できると感情・気分をうまくコントロールできることが期待できます。
あらかじめの対処として身につけておくと、同じことの繰り返しから脱却できるかもしれませんね。このように、気分の乱高下のコントロール法も含め、もろもろの方法論を持っているのが認知行動療法です。
今日もお読みいただきありがとうございました。
あなたの心の「お宝」が見つかりますように。