マインドフルネスに関する自分自身の学習や、教育・指導をするときの解説についてのまとまった情報としてアップします。
日々アップグレードしていますが、どこかでまとめないと情報が散らばってしまうので、どちらかというと自分のための覚書となっています。多分、今後も定期的にアップグレードされると思います。
ご参考になりましたら幸いです。
マインドフルネスとは
仏教にルーツがある
「マインドフルネス」という言葉自体はここ数年で急速に知られるようになってきました。
マインドフルネス(Mindfulness) とは本来、「注意深さ」とか「細心の注意を払う」というような意味ですが、意訳して「心を今この瞬間に集中する」ということを意味します。これは、仏教用語の「念sati」を英訳する際にmindfulnessが当てられたことに由来するそうです。
すなわち、マインドフルネスは本来、仏教における瞑想(禅)によって目指す心の状態の一つであり、「今」という瞬間に完全に注意を集中するための方法といえます。
マインドフルネスの展開
現在我々が知るマインドフルネスは、米国マサチューセッツ大学医学部のジョン・カバット・ジン博士による実践と研究により、宗教的目的から分離されたエビデンスのあるストレス低減法として体系化された訓練プログラムに端を発します。
ジョン・カバットジン (2007) マインドフルネスストレス低減法 北大路書房
それが、ストレス低減や能力開発などの自己啓発のメソッドとしてグーグルやインテルなど米国有名企業のエグゼクティブの間で流行し,そこから日本においても周知されてきた、古くて新しい心のトレーニング法といえます。
マインドフルネスの原理
心のしなやかさと身体のしなやかさ
マインドフルネスを練習することには非常に多くの心理的・身体的メリットが認められていますが、原則的には「認知的柔軟性(心のしなやかさ)」をもたらす、訓練法ということになります。こころがしなやかになれば、身体もしなやかにすなわち、リラックス効果が同時に得られることになります。
心のしなやかさとは、「受け流す力」と言ってもいいでしょう。こだわりや執着から離れて、ものごとを「あるがまま」に受け入れるという態度です。
例えるなら、コップが常に満たされていると、もう何も入れることができませんが、常に空にしておくと、常に新しい飲み物を入れられる、ということです。
こだわりや執着から手を放す
こだわりや執着(いわゆる煩悩)が心を満たすと、我々の心は柔軟さを失い、あれこれとさまよい、とらわれて苦悩(ストレス)を抱えてしまいます(コップが満たされた状態)。こだわりや執着は基本的に「過去か未来」のことなので、「今,この瞬間」に注意を集中し,脳の容量を「今,この瞬間」で消費してしまえば,過去や未来について「考えない状態」になり(コップが空になった状態)、それがストレスを低減させることにつながります。
過去のことでクヨクヨ、未来のことでソワソワ、人の考えが悩みをもたらします。
つまり,マインドフルネスとは,我々の心があれこれとさまよい,とらわれて苦悩を抱えるとき,今現在の何らかの対象をとらえ,それに集中し,評価することなくただそれを観察して心を「満たす」ことで,我々の心を乱すほかの対象が侵入してくることから「心を守る(守意)」ことなのです。
マインドフルネスの効果
マインドフルネスは,ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌を低下させ、生理的な安定をもたらすとともに、不安を軽減し,抑うつを減らし,衝動的な行動を減らし,自尊感情を高めるなどの心理的効果、さらに記憶力や判断力、意志力などの認知機能の向上とそれによる生産性の向上など、様々な効果をもたらすことが実証されています。
まさにいいことずくめで、それが、わずかな時間のトレーニングを続けるだけで手に入れられる、というわけなので、流行するのもわかりますね。
マインドフルネスの方法
マインドフルネスの元ネタである仏教的な意味での禅・瞑想では,「止観」という瞑想法によって「念(sati)」すなわちマインドフルネスを得て,乱れやすい心を今という瞬間に「つなぎとめる」ことを目指します。
その際、「今という瞬間」にいるために、紛れもなく今そこで感じ、存在している自分自身の「身体」や「身体の動き」に注意を向けます。具体的には、「呼吸」という動作と「呼吸」に伴う体の動きや感覚に注意を向けます。
すなわち・・・、
ということが基本になり、これを、何度でも繰り返す、ということが必要です。
マインドフルネス訓練法
実践上の留意点
苦痛と向き合う、という態度
現在のマインドフルネス訓練自体は、禅や瞑想の方法を踏襲しつつもマイルドでコンパクトにはなっています。ただ、その一方,前述のように、捉えるべき対象として心を体すなわち体の感覚につなぎとめるために行う「注意の集中」は、ある意味での緊張が含まれる、ちょっと苦痛な内的な作業となります。例えるなら、幅広の器に水をなみなみと注ぎ、それをこぼさないように移動する、というようなことです。
実際は、そこで感じられる苦痛感も訓練の手段となるのですが、あらかじめ「苦痛感があるのは当たり前」ということを含んでおくことも大切です。
すぐに変化や効果を求めず取り組み続ける態度
我々の場合、修行僧ではないので、悟りや解脱といった宗教的境地を目指すわけではなく、マインドフルネスによって「苦悩」という到来してほしくないものから心を守り、心身の健康や高い生産性を手に入れるということに意義があると考え、無理のない範囲で続けることが大切です。
方法としてはそう難しくないのですが、とにかく「継続」、ネバーギブアップが必要です。
【定型的なトレーニング】
呼吸の要領
- 吸う・吐く・止める,を意識して行う。
- 吸うときは鼻,吐くときは鼻 or 口から。
- 深く・長いを心がける。
- 呼気を長くする(吸うは緊張,吐くは弛緩)。
集中(呼吸)瞑想の一つ
- 床または椅子に座る。腰骨を立て,肩を落として,顎を引き、力を抜いて楽な姿勢を保ちましょう。できる人は結跏趺坐を組んでもいいです。
- 目は半眼(半分閉じる)を維持し、斜め45度下の一点を見つめます。
- 姿勢を維持したまま、静かに呼吸に集中しましょう。息を鼻から吸い込んで、鼻から吐きます。
- あなたのペースで呼吸のリズムを調整しながら、息を吸い,少し止め,そして吸うときと同じリズムで息を吐き,あなたにとって最も心地いいリズムを見つけると良いでしょう。
- 心地いいリズムを見つけたら、鼻腔に注意を集中し、吸い込んだときに鼻腔を空気が通り抜ける感覚を感じましょう。同じように、吐くときに空気が鼻腔を通り抜ける感覚を感じましょう。吸うときは空気を冷たく感じ、吐くときは空気を暖かく感じるかもしれません。
- 以上「吸って、吐いて」を1回として10回(10呼吸)繰り返しましょう。数を忘れたら、もう一度1から数え直しましょう。
- 10数えたら、11,12,と数えるのではなく、再び1に戻って10まで数えましょう。
- 注意が鼻から離れたことに気づいたら、あわてず落ち着いて、再び、注意を鼻に連れ戻せばいいのです。それを、何度でも繰り返すことがマインドフルネスのトレーニングになります。
※10回1セットとして、まずは3セットを目指すとよいでしょう。途中で休憩を入れたりしてもOKです。
観察瞑想の一つ
- 仰向けに寝るか,椅子に座る。座る場合は腰骨を立て,肩を落として,力を抜きましょう。
- 目は半眼(半分閉じる)。閉じた方が気持ちがいいと思う人は目を閉じます。
- 静かに呼吸に集中しましょう。息を吸い込んだときは体が静かに膨らみ,息を吐いたときは体が縮む(引っ込む)のを感じるかもしれません。呼吸とともに生じる体の動きに注意を向けましょう。
- あなたのペースで呼吸のリズムを調整しながら、息を吸い,少し止め,そして吸うときと同じリズムで息を吐き,あなたにとって最も心地いいリズムを見つけると良いでしょう。
- 心地いいリズムを見つけたら、「ふくらみ」を感じながら空気を体の中全体にゆっくりと入れ,「縮み」を感じながらゆっくりと吐き出し,その呼吸の心地よさにひたりましょう。
- 以上を「吸って、吐いて」を1回として10回(10呼吸)繰り返しましょう。心が呼吸から離れたことに気づいたら、あわてず落ち着いて、再び、心を呼吸に連れ戻せばいいのです。それを、何度でも繰り返すことがマインドフルネスのトレーニングになります。
【日常的なトレーニング】
お読みいただきありがとうございました。