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カウンセリングオフィス広島心理教育研究所

目標と苦悩は紙一重|広島心理教育研究所

広島心理教育研究所カウンセリングルーム代表,臨床心理士・公認心理師の小村緩岳です。

「目標」を立てましょう、とはよく言います。

 例えば、「今月で2キロやせる」とか「本をひと月に10冊読む」といった具体的なものもあれば、「人生の方向性」とでもいうべき長期的な目標もあります。

 一般に、今後の人生をどう生きるのか、どの方向に向かうのか、という長期目標のもとで、目標を具体化していくことが達成には重要であるとされています。

 さらに、目標の達成に何より必要なこととして、その目標があなたの「価値」に沿っているかどうかがあります。

 ☆ ☆ ☆

 「価値」とは「本当のあなた」が望むこと、といってもいいかもしれません。

 だから、〈お金持ちになりたい〉という長期目標があるとして、それがあなたの「価値」に沿っていればいいのですが、そうでないのに〈お金持ちになりたい〉という目標を立てたなら、それは本当のあなたでなく、他のなにかに「突き動かされて」いるのかもしれません。

 それに、実現するかどうかは別にして、たとえそれが実現しても、「幸せ」ではないかもしれません。

 ☆ ☆ ☆

 仕事でいいかえると「天職」でしょうか。

今の仕事に「価値」を見いだせないのなら、「天職」に「転職」できたらいいのですが。

(すみません、ダジャレです)

 ☆ ☆ ☆

 とはいえ、「天職」または「価値」を本当に理解している人は少ないかもしれません。

かくいう私も、偉そうに書いていますが、自分の「価値」を明確にしているかというと、はなはだ疑問だったりします。

 ただ、それなりに苦悩の日々を過ごして、ある程度は「見つけた」つもりです。

 「価値」をどう見つけるかということには、いくつかの方法論があったりしますが、いずれにしても重要なのは、価値に沿った「目標」が達成されても、「苦悩」はなくならない、という理解です。

 仮に、何らかの苦悩や苦痛をなくす、という目標を立てたとして、それが達成されたらどうなるか?

 おそらく、次の苦悩や苦痛が生じて、それを解決するための目標を立てる、ということになるでしょう。

つまり、苦悩や苦痛は生きている以上、決してなくなるものではないので、それを解決しよう、なくそうとする限り、常に苦悩や苦痛と闘い続けることになるのです。

 苦悩や苦痛と闘う、という認識だと、それらはよりしんどいものとなり、あなたをそのしんどさの中にどんどん巻き込んで行ってしまうのです。

 大事なのは、苦悩・苦痛を人生の同伴者として考え、その時あなたは、どのように生きているのか、という理解です。

 ☆ ☆ ☆

 例えば、仕事を考えますと、仕事自体はストレスを生む苦悩であり、苦痛であります。

また、仕事自体は常に問題解決のプロセスを求められることであり、際限なく苦悩・苦痛をもたらすものであります。

それを、仕事にコミットできず、もたらされた仕事、つまり苦悩・苦痛をなくすためにやっている、と考えると、おそらく、取り組みに対する意欲や自発性は発揮されず、生産性は低く維持されるのではないでしょうか。

しかし、その取り組み(仕事)にあなたなりの「価値」を置くことができたら、苦悩・苦痛はあれども、仕事にコミットして、生産性高く仕事ができるのではないでしょうか。

(今風に言えば、エンゲイジメントが高い状態ですね。)

いやな仕事であっても、いやな仕事、という苦悩や苦痛と向き合って受け入れ、「価値」に沿って仕事に取り組めれば、おそらく、いやな仕事でもストレス度は減り、喜びが増えるはずです。

 その時、苦悩や苦痛は、「背景」となり、苦悩や苦痛とともに、価値を大切にして生活にも喜びを見出すことができるかもしれません。

例えば、仕事が嫌だから、仕事を辞めたい、と考えたとします。

やめること自体は自由なので問題ないですが、それによって経済的にひっ迫すると、家庭生活も維持できなくなるかもしれません。

もしその人の価値が「家族」にあったとしたら、これは大問題です。

 大切な価値である家族を失うことになるとしたら、きっと仕事をやめることはできないでしょう。

 仕事そのものは価値に沿わないですが、それから逃げると、本当に大切な価値を失ってしまいます。

 「価値が低い」からといって、「放棄」できるものでもないのです。

彼が下した選択が「家族のために」仕事を続ける、というものだとしたら、それは、「最重要な価値に沿った選択」です。

 そして、価値に沿っていれば、仕事を続ける、という決断は、予想される苦痛に向き合う意志(ウィリングネス)とともに自発的・能動的に下されたものであって、誰かに(たとえば奥さんに)説得されて、嫌々下した決断ではないはずです。

 ただ、もし、どうしても、その仕事や状況・環境にコミットできず、価値に沿わないのであれば、それは「環境を変える」サインといえるかもしれません。

 家族を大切にしつつも、もう一つのあなたの価値を大切にするには、次には、どんな苦痛を受け入れる必要があるでしょうか。

 価値を明確にして、苦痛を引き受けるウィリングネスがあれば、人はどんな決断でも下せるのです。

 自分は何のために生きているのか、どう生きたいのか、どこに向かいたいのか、本当にわかるのはそこにたどり着いてからかもしれません。

 ならば今できることは、「喜び」を羅針盤として、進む方向を探っていくことでしょう。

 「喜びの意味は今に明らかになり、苦しみの意味は未来に明らかになる。(発達心理学者winicottの言葉)」

 それが「価値を明確化」することであり、「あなたらしい解決」を目指す第一歩、と感じています。

今日もお読みいただきありがとうございました。

「自分も人も大切に」