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カウンセリングオフィス広島心理教育研究所

上司として、先輩として ~ラインケアの視点から~

働く人のメンタルヘルスに欠かせないのが「ラインによるケア」すなわち管理監督者によるケアです。ここでは上司または先輩としての心構えについて取り上げます。

管理者としての資質の向上

メンタルヘルスは休職・退職者の増加や自殺の増加を防ぐということを主な目的に、様々な施策が実施されてきました。おそらく、国による施策はほぼ終了し、後はそれを各事業所内で熟成させていく段階に入っていくと思われます。

そのためにはセルフケアの啓発も大切ですが、それ以上に管理監督者となった方の資質の向上が重要であるといわれています。

 部下の適性や資質を見抜く目

 近年の若者気質といいますか、若者の「気の弱さ」が企業などでは目立ちます。学校教育などの傾向が反映されているかとは思いますが、基本的に「怒られ慣れていない」傾向があります。少し強めに叱るとそれだけで自信を失い、会社を休んだりする社員が増えているという話をよく聞きます。

もちろん、そうでない若者も大勢いますが、それぞれの職員の性格や考え方に沿ったかかわりがメンタルヘルス対策という点では重要になってきます。

カウンセリング・マインド(傾聴力)

人の適性を見抜き、考え方を知るためには対話が必要です。昔から「飲み二ケーション」といいますが、上司が部下とざっくばらんに話せる機会があり、いざという時に上司が親身になって部下の話を聞くことができれば、自ずとお互いのことが分かってきます。そうした双方向の対話を常に実施できるということもラインケアに求められているのではないかと思います。

最近は上司と部下が飲みに行くということが少なくなってきている(部下が行きたがらない)ということをよく聞きますが、それだけに職場での声かけが大切なのかもしれません。

ハインリッヒの法則

ご存じの通り、一つの事故の背景にはいくつもの「ヒヤリハット」が存在するという法則です。メンタルヘルスについても同じように、一人のメンタルヘルス不調者の背景にはいくつもの「サイン」がでているものです。

そのサインに気づいて何らかの対策を取れるかどうかが、メンタルヘルス不調を未然に食い止めることにつながるといえます。

「けちな飲み屋」サイン(鈴木、2009)

しかしながら、実際そのサインを見つけるのは意外と難しいものです。近年、鈴木(2009)がわかりやすくまとめているので、ご紹介します。

ケチな飲み屋サインとは

<メンタルヘルス不調者を早期に見つけるための指針です>

け:欠勤が増える

ち:遅刻・早退が増える

な:泣き言を言う

の:能率の低下

み:ミスが増える

や:「辞めたい」と言う。

鈴木安名(2005) 人事・総務担当者のためのメンタルヘルス読本 労働科学研究所出版部

こうしたサインが見られるときに、管理者としてどのように声をかけ、どのような資源を使って対策をとっていったらいいのでしょうか。メンタルヘルス不調のサインが見られた時のポイントをご紹介。

「けちな飲み屋」サイン(鈴木、2009)を見つけたら

  • 速やかに本人に面談し、状態を確認した上で、適切な対処を検討しましょう。
  • 予防が大切ですので、サインの段階でできるだけ速やかに専門家にかかることをすすめましょう。

どのように声をかけるか

  • できていない部分を指摘したり問いつめたりしないようにすることがポイントです。
  • 本人も助けを求めている場合が多いので、適切な声かけには素直に応じることが多いです。
  • もちろん、個別にプライバシーを保てる状態で。
  • 「最近、どうしたの?私でよければ話を聞くわよ?」など。
  • 「よく眠れる?」「食事はおいしく食べられる?」「疲れやすいみたいだけど・・・」など。
  • メンタルヘルス不調にはたいてい不眠がともなうものです。上記の質問で不眠があるようなら、不眠の治療を促します。
  • 「不眠ってつらいわよね。がんばってきたから疲れがたまっているのかしら・・・。○○(専門家)に相談してみるという方法もあるわよ?あなたの仕事にも差し支えが出ているようだから、不眠の状態を専門家に判断してもらうだけでもいいんじゃないかしら?」など抵抗が少ない声かけを。
  • その後、カウンセリングなどをご紹介するのがよいでしょう。

ねぎらい、ほめる

  • 人は自分の感情や考えを分かってほしいと思っているものです。すべて分かることは不可能ですが、共感的な気持ちでねぎらい、できているところはほめるという心構えが人の心を開かせます。
  • 「お疲れ様」「ゆっくり休んでね」「助かったわ」「困った時は声をかけてね」など当たり前に思える声かけを日々大切にすることで職場内の雰囲気もよくなり、メンタルヘルスにも役立ちます。

自分のケアも忘れずに

  • 管理者といえども何かのきっかけで不調になることもあります。まずは自分自身の健康も管理しておくことが大切です。

鈴木安名(2005) 人事・総務担当者のためのメンタルヘルス読本 労働科学研究所出版部