先週末は島根県へ遠征しての認知行動療法の研修講師を務めました。
実家が島根なので、前泊し、余裕をもって現地入りできましたが、5時間にわたる講義だったため、終了後はかなり疲れました。
ただでさえ、のどがあまり強くないのですが、酷使したせいか、声がかすれ気味に。
でも、主催者の方からは、「先生はいい声してますね。通りがよくって…」とお褒めの言葉を頂きました。
実は、私、声にはあまり自信がなく、昔はこもりがちの全然通らない声をしていたのですね。それがこのようにほめていただいて、なんと言いますか、青天の霹靂でした。
やはり、大学でも毎週講義ですし、カウンセリング中も聴くだけではなくて、ずいぶんしゃべりますので、自然に、発声がうまくなったのでしょうね。
(子どもができてから…という説もありますが^^;)
どちらにしても、人の適応力って、凄いですね!
さて、件の講義は、専門家向けの講義でしたが、最近は一般の方へのカウンセリングのほか、専門家向けの講義、セミナーも増えてきました。
専門家向けの場合、どうしても視点が専門的になりますので、カウンセリングの際にもその目線の影響が出ることもあり、カウンセリングなのに講義調になったり、といった弊害も出がちです。
TPOに応じた「切り替え」が必要になります。
状況に応じた気持ちの切り替え、それは少し「意識」をする必要があります。
たとえて言えば、いっぱいにお茶が注いである湯のみを、中身を捨てるなり移すなりして、いったん『空っぽ』にする事です。
意識しないと、新しいお茶を注いでも、一向に湯呑に溜まらないで、こぼれるばかりになってしまいます。
今風の言い方をすれば、「リセット」とか「リブート(再起動)」になるでしょうね。
満タンのメモリーを解放することです。
では、そのためにどうやったらいいのでしょうか?
気持ちを切り替えるには色々方法はありますが、メモリー解放、湯呑を空っぽにする、というイメージに近い方法として最善の方法は、「忘れる」ということです。
ただ、「忘れる」ために「忘れよう」と努力することは、返って忘れられなくなってしまうという、人の思考の働きが作用しますので、ご法度です。
例えば皆さん、○ッキー・マウ○を思い浮かべてください。
そして、これから1分間、それのことを思い浮かべたり考えたりしないようにしてください。
(・・・一分経過)
さあ、どうでしょうか。考えないですみましたか?
一度は頭をよぎったのではないでしょうか。それとも、それを考えまいとする努力に多大なエネルギーを費やしたのではないでしょうか。
ここで「○ッキー・マウ○を思い浮かべてください」と指示されるまでは全く忘れていたのに、いざ思い出して、それを思い出さないようにと指示されると、たったの1分だけでも、思い出さないために多大なエネルギーを使う必要があり、それとて徒労に終わることもあるわけです。
一体これはなんなのでしょうね。
ストレスが繰り返され、気持ちが不調になる背景によく見られる、「誤った対処」の一つです。
だから、切り替えようと思ったら、「忘れようとしないこと」が必要です。
でも、「忘れようとしなければ忘れられないじゃないか」、という声が聞こえてきそうですが、あの耳の大きいネズミの実験で、返って忘れられない事がお分かりかと思います。
では、どうするか。
方法はいくつかありますが、
「忘れる・忘れない」が問題ではなく、「切り替えられているか」ということが問題なので、「わすれないまま、切り替える」ことができたらいいわけです。
そのためには、たった一つのことができればいいです。
それは、「目の前のことに集中すること。」
言ってしまえば、それだけです。
ただ、それを単に「気をそらす」というように考えると、結局「忘れようとする手段」になってしまうところに注意が必要です。
例えば仕事でいやなことがあった時、帰りに喫茶店でお茶しているとすると、(そのことを忘れないで、頭の片隅には置いておいて)飲んでいるコーヒーの香りや味、温度、のど越しといった、「今」味わっているコーヒーを全力で「感じ取る」ことです。
ちょっと言葉でのみご説明するのは難しいのですが、「こころを整理」して、「今」不要なものを必要に応じていつでも取り出せるように「片づけておく」ことですね。
こうした心の整理にはちょっとしたコツと練習が必要ですが、決して難しい事ではありません。
・・・といいますか、人はそれを普通にいつもやっているのですが、コトが大きかったり、ショッキングだったりすると、時として、無理に忘れようとするサイクルに入ってしまうのですね。
そうして悪循環に陥ってしまうことになります。
「忘れようとしないこと」といっても、「忘れようとしない努力」をするのではないですよ。
少し視点を変えて、別の角度から眺めてみる、というきもちが大切です。
今日もお読みいただきありがとうございました。
あなたのお宝が見つかりますように。