カウンセリングにおいて「共感」はとても重要な要素です。
共感する力とは、言い換えれば、想像力でしょうか。
自分にも経験があり、身につまされる相談であれば、共感するのに手間はかからないでしょう。
しかし、一人のカウンセラーが経験できることは限られています。
そこで、想像する力の手を借りるわけですが、その力というのは、言うなれば、イメージ力、でしょうか。
例えば、わが子を亡くして悲嘆に暮れている親のカウンセリングをするとき、自分にまだ子どもがいなかった頃と、子どもができた現在、で比べれば、時間経過によるカウンセリング技能の向上を差し引いても、現在の方が遙かに共感できるでしょう。
「もし、私の子どもが同じように亡くなったら・・・。」と考えると、他人事ではなくなります。
目の前のクライエントさんは、こういう感情で、こういう考えで、苦しみ、悲しんでいるんだということが、とても深い臨場感をもって共有することができます。
一方、全く自分にとって経験もなく、自分の周囲でもあまり聞かない話に対して、カウンセラーはどのように共感していけるのでしょうか。
答えがあるわけではありませんが、やはり、クライエントさんの話を注意深く聴く、ことにつきると思っています。
そうして、クライエントさんに対して、「そういう考え方から、そういう感情が生まれているのか!」と知ることができ、さらに、「もし自分が同じ状況で同じように考えたとしたら・・・」というとき、同じ感情を共有できるとしたら、それは「共感」になるでしょう。
そうすると、そのクライエントさんの悩みを、ある意味「自分のもの」にすることができます。
もちろん、カウンセラーという役割の範囲内で。
つまり、カウンセラーは、いったん自分を「捨てている」のでしょうか。
捨てるという言い方は適切ではないかもしれませんが、自己へのとらわれ、みたいなものを取り払い、クライエントと心理的に「融合」していく感じ?
その感じがクライエントさんの方に伝わると・・・、いわゆる「ラポール」につながるのかもしれません。
私にとって、問題に対する見方や、臨場感を共有するという感覚、常に意識しておきたい心構えの一つです。